三協アルミ
「SACLAB」より千葉学氏らが関わった3つの新製品が登場

こちらでも以前にシリーズで紹介した、三協アルミと5組の建築家によるプロジェクト「SACLAB(Sankyo Alumi Creative Laboratory)」。初年度は「新しい境界」とエクステリアデザインについて考察してきましたが、このたび3組のアイデアが「S.Border series」として商品化されました。

千葉 学「RING RING」

間隔の違うたて桟に3種類の大きさのリングを複数取り付けたもの。リングには植木鉢や金魚鉢を置くことができ、皿を並べることも可能。植木鉢が並べば、そこは垂直に広がる華やかな庭となり、何かの餌をのせた皿を置けば、そこは鳥や猫の集まる賑やかな場所になるかもしれません。お気に入りの庭いじりの道具をギャラリーのように並べてもいいし、何もしなくても幾つものリングが浮かぶ浮遊感のある美しい境界面ができます。

この「RING RING」には、リングの取り付き密度が異なる2つのタイプが用意されています。これらを組み合わせて境界面の密度をコントロールすれば、プライバシーのコントロールも同時に行うことができます。住宅のいちばん前に置かれることの多いフェンス。そのフェンスに住人が手をかけることによって、緩やかに視線を遮る緑の目隠しスクリーンに変わったり、交流の生まれる開放的なスペースになるなど、さまざままな表情を見せてくれます。住んでいる人の生活が溢れ出てくるようなフェンスは、境界面をささやかに演出し、住人同士のコミュニケーションを育むことにもつながり、新しさと同時にどことなく懐かしさも感じられる風景を街に蘇らせてくれます。

納谷建築設計事務所「momi」と「kaede」

家に木を植えていくように設置ができる樹木型フェンス。針葉樹のような形態の「momi」と広葉樹のような形をした「kaede」の2種類があります。線で敷地を囲んでいく通常のフェンスとは異なり、点の連続として構成していくことを提案。つまり、並べてフェンスとして利用するだけでなく、1本でも成立するフェンスとなっています。例えば、1本でシンボルツリーのように設置してデコレーションを楽しんだり、複数本を連ねて並木のような表情をつくり出したりと、いろいろな楽しい使い方の可能性があります。

有機的で優しい境界に見せる工夫として、実際の樹木のように根元から先端に向けて徐々に肉厚の変化をつけ、立体感と存在感のあるディテールに仕上げられています。さらに本物の植物が絡むことでフェイクとリアルが交差する新しい関係をつくることができたり、連ねて設置した際にできる動きのある稜線や新たな隙間の形から漏れ出る光など、自由に表現のできる鋳物素材を最大限に活かした形で、その表情はより魅力的なものになります。

今までの「仕切る」ことだけを前提としていた境界を改めて考えなおすことで既成概念から自由になり、住宅のセキュリティの確保という大切な役割を全うすると同時に、楽しく魅力的な景観を提供することができ、住人だけでなく街並までが豊かになるフェンスです。

永山祐子建築設計「mermaid」

「mermaid」は、衣類のように建築を包み込む囲いです。ただの仕切りとして、その敷地内だけで完結するものではなく、街の風景の一部を担うものとして、建物を包み込んでプライバシーを守りながら、外に向けて個性を表現する服のような存在として考えられました。テキスタイルには古くから自然の風景をモチーフにしたものが多くあります。mermaidは日本で「青海波」といい、水景を表した文様。魚のうろこのような、さざ波のような優しい曲線は和でも洋でも使用でき、住宅の外観様式を選ばず、どんなシチュエーションにも合わせやすい形となっています。お気に入りの服で身を包み込むように暮らしの中に古来の文様を取り入れ、ただ仕切るだけだった境界を華やかに、軽やかに演出します。

全体的なイメージはなるべく小さな単位のモジュールで大きな面をつくれるようなものにしたいということ。1つの小さな波の形が大きな水景を描いていき、スケールに縛られることなく、住宅の塀、ビルのファサード、公共広場の間仕切り、インテリアの壁面など、さまざまなシーンに対応できます。

大きな面をつくる際もジョイント部分はそのままのパターンが続いていくように構成されているため、柱などが間に入らず、つなげていけば無限の面をつくることが可能。柔らかな仕切りが私有地と公共空間を優しくつなぎ、新しい付加価値をもたらします。

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