「世界を変えた書物」展、開催中

こんにちは、コミュニケーターのなかむーです。朝晩はずいぶん冷え込むようになってきましたが、夜が長くなるほど楽しい夜更かしがしたくなり、ついつい本に手が伸びます。本好きは独り寝しないと言いますが、枕元に積まれていく本が増えていくのも困りものです。今日はそんな本好きにはぜひとも知っていただきたい、「世界を変えた書物」展をご紹介します。

現在ナレッジキャピタル「イベントラボ」で開催中の「世界を変えた書物」展では、金沢工業大学ライブラリーセンターの稀覯書(きこうしょ)コレクション「工学の曙文庫」からの蔵書が展示されています。このイベントのサブタイトルは、「人類の知性を辿る旅」です。分野や趣味が違う方でも、どなたで楽しんでいただける仕掛けがたくさんあります。

稀覯書とは、極めて少数しか残っていない、古い時代に制作された貴重な本のこと。「工学の曙文庫」には、ただ古いだけでなく、デザインや装丁が美しく、何より科学の発展に大きく寄与した、つまり“世界を変えた”初版本ばかりが集められています。コペルニクスの地動説、ダーウィンの進化論、ニュートンの万有引力、アインシュタインの相対性理論……。例を挙げればきりがありませんが、今や誰でも知っている、世界の礎になっている考えが、誰もが共有できるものとして紙の上に刷られたとき。まさにその時代に最先端であった理論や技術が、最初にインクを落とされたかたちのまま展示されています。人類がその知性を分かちあうため、もっと先に進むため、後世に残してきた歴史を直接目にすることができます。

それだけでも大感激なのですが、この展覧会の魅力はそれだけではありません。全部見せてしまうのはもったいないので、少しだけ中身をご紹介します。まず、本の中に吸い込まれるような入り口をくぐると、そこにあるのは「知の壁」。

電子書籍が普及してきたなかで、こうして肌で感じられる圧倒的な重厚さ、インクや紙の匂いは、それだけで本というメディアの価値を感じさせます。本好きにはたまらない、理想の本棚ではないでしょうか。ここには建築関係の本が多く展示してあり、木版画などで刷られた美麗な挿絵も楽しめます。鏡が多用された本棚は、金沢工業大学の建築系の学生たちが製作したものです。ほの暗く雰囲気のある「知の壁」を抜けると、そこは「知の森」。世界を変えた書物たちがいくつもの弧を描くように展示されています。

弧の1つ1つが、「天文学」「幾何学」という具合に系統別に色分けされて並べられています。科学の発展は、発見を実証し、あるいは反証を見つけ、進歩を繰り返してきました。この展示では、それぞれの本1つ1つに、その本が次の本にいかに影響を与え、今ある世界をかたちづくってきた様子がわかりやすく示されています。例えば「電気」なら、金属が反発して動く実験によって、静電気を発見したという本。カエルの筋肉がぴくりと動くのを観察して、動物も電気ナマズのように電気を保持しているのではないかという仮説を立てた本。その仮説を元にした実験で、静電気ならぬ電流を発見し、それを受けて電池が発明され、モーターが発明され、最後にはエジソンによって発電機が発明された、という具合です。次に、中央にあるこのモニュメントをご紹介します。

このモニュメントは、古代ギリシャのアリストテレスの著作を礎に、それぞれの分野がどのような発展を経て繋がっていくかを立体的に示したもので、最後にはすべての系統がアインシュタインの相対性理論へ繋がります。繋がりと本のタイトルが視覚的にわかりやすいので、興味がある系統から本を選び、その色がついたラインをたどっていくと、簡単に探すことができます。順番に見るのもいいですが、自分が見たいものを「知の森」の中から探すのもわくわくしますよ。

自分で探すのはあんまり得意じゃないなという方には、この展覧会の監修者である竺 覚暁(ちく かくぎょう)金沢工業大学教授に、見所や本にまつわるエピソードを解説していただけるミュージアムトークがおすすめです。私も参加しましたが、それぞれに美しく価値のある本がつながる過程がよくわかり、この展覧会の全体像が見えてさらに楽しくなるツアーでした。ミュージアムトーク開催日時はホームページに掲載中です。

そうはいっても科学とかわからないし、という方にも見ていただきたいのは、どの本にも美術的価値があるということ。活版で刷られた字の凹凸や版画の微細な表現、綴じられた紙や装丁の美しさ。開かれた本の下に鏡があるので、表紙までじっくり見ることができるのが嬉しいところです。

こんなコレクションが無料で見られるのも驚きですが、なんとこの展覧会は撮影自由になっています。会場では思い思いに展示品を撮影する方も多く、出口ではすごかったね!という声をよく聞きます。個人的には、出口にあるパネルにさりげなく書かれている「『工学の曙文庫』について」という文章に心打たれました。ぜひ読んでみてください。本や科学、歴史が好きな方はぜひとも、そうでない方もふらりとお立ち寄り下さい。会期が短いので、1度じゃ足らない!と思ったら2度、3度と来られるように、早めの来場をお待ちしております。(文/コミュニケーター・なかむー)

この連載は、ナレッジキャピタルのコミュニケーターの皆さんに、ナレッジキャピタルとその周辺についてのさまざまな話題を提供していただきます。