最先端テクノロジーアートによる実験室、3Dホログラムの試作も登場 MEDIA AMBITION TOKYO 2016

最先端のテクノロジーアートのショーケースである「MEDIA AMBITION TOKYO 2016」が開催中だ(3月21日まで)。4回目となる今年は、六本木を中心に都内各所で関連イベントがさまざまに繰り広げられている。

六本木ヒルズの森タワー52階 東京シティビューでは「MAT LAB」と題し、11組の参加者による実験的なテクノロジーアートやプロジェクトを展示。

▲「Space Experiment #001 #002 #003」
建築チーム、ライゾマティクス アーキテクチャーは空間におけるテクノロジーの可能性を探る3つのインスタレーションを発表。

▲「WALKING Cube | DIGITAL CHOC 2016」1024 architecture
コンピュータ制御のエアサスペンションによる金属の立方体のパフォーマンス。大きさや形を自在に変えながら動き、それによって生じる荒々しい音が次第に音楽のように聞こえてくる。


この展覧会は、体験型の作品が多いのが特徴。脳科学者の藤井直敬氏(理化学研究所)が研究を進めるSRのシステムを体験できる「The Mirror」や、メディアデザイナーの水口哲也氏(レゾネア)が開発したVRのゲーム作品「Rez Infinite」とその共感覚体験を可能にする「シナスタジア・スーツ」といったプログラムなど、来場者が被験者となってテクノロジーと身体あるいは意識との関係について考える作品が注目を集めていた(どちらも整理券制)。

▲「The Mirror」Naotaka Fujii + GRINDER-MAN + EVALA
藤井氏が研究するSR(Substitutional Reality:代替現実)システムでは、体験者が向かい合っている鏡像の世界が時間軸を行き来したり、実際にはいないはずの人の気配を感じるなど、「いまここにいる」という感覚を揺さぶられる。
Photo by Koki Nagahama ©2016 Getty Images

▲「シナスタジア・スーツ」の画像


また“ラボ”の名にふさわしく、現在進行形で開発が進んでいる技術のプロトタイプも目立つ。

3Dモデリングから洋服をデザインするファッションデザイナーのオルガ(エトヴァス・ボネゲ)は、布の上に電子回路を直接描き、2,400個のLEDをつけたドレスをデザイン。セメダイン社が開発した導電性接着剤を用い、導電性インクを開発するAgiC社が製作を担当した。布や紙などさまざまな素材に電子回路をプリントする技術は、ウェアラブルデバイスの可能性を一気に拡大すると期待されている(ちなみにAXIS最新号特集でも、AgiCを紹介)。

▲「FABOLOGY」Olga(Etw.Vonneguet)


ビジュアルデザインスタジオのWOWは、3Dホログラムのアート作品「Light of Birth」を展示。映画「スターウォーズ」のコミュニケーション手段のように、空中に360度の立体映像を投写するホログラフィー技術は誰もが実現を待ち望んでいるテクノロジーかもしれない。本作品は、レーザーと霧を使うことで、それに近い状況を実現している。霧のなかで人や鳥、キューブなどのオブジェが滑らかに動く映像(約2分半)が投影され、思わず手を伸ばして触れたくなるような実体感がある。

▲「Light of Birth」WOW / Nobumichi Asai
Photo by Koki Nagahama ©2016 Getty Images

3d laser mist hologram “Light of Birth”
http://www.w0w.co.jp/works/Light_of_Birth/?tag=all


プロジェクトを手がけたのはWOWの浅井宣通氏。同氏は2年前、顔をキャンバスに映像を映し出すフェイスプロジェクションマッピング「OMOTE」を発表し、今年はその最新バージョン「Connected Colors」で世界中から脚光を集めるメディアアーティストだ。

「Connected Colors」
http://www.w0w.co.jp/works/connected_colors/?tag=all


今回は、コンピュータ上と実空間の座標系を調整する「OMOTE」の原理を発展させ、複数の光源が交差する一点が明るくなる仕組みを使って立体ホログラフィーを実現した。用いたのは、レーザー式の小型プロジェクター40台と噴霧機、そしていくつかのオープンソースコード。すでにあるテクノロジーを最適に組み合わせて、全く新しい体験をつくり出している。プロジェクトは今後も継続していくとのことで、4月のミラノトリエンナーレ中には新作が披露される予定だ。

▲ 「Light of Birth」を投影する装置


AR、VR、3Dプリンターといった単独のテクノロジーに人々が驚いていた時代は終わり、今はそれらの材料をいかに“調理”し、人間の身体や感性へ引き寄せていくかという段階にある。本展の参加者たちのように、ハードやソフトの知識と技術を備えたコンセプター、アーティストが本格的に活躍する時代になってきた。そうした状況を実感できる展覧会だ。(文・写真/今村玲子)


MEDIA AMBITION TOKYO 2016

会 期 2016年2月26日(金)~3月21日(月・祝)
    ※開催期間は会場によって異なります。

会 場
01. 六本木ヒルズ[六本木]
02. INTERSECT BY LEXUS TOKYO[青山]
03. IMA CONCEPT STORE[六本木]
04. アンスティチュ・フランセ東京[飯田橋]
05. デジタルハリウッド大学[御茶ノ水]
06. Apple Store, Ginza[銀座]
07. Apple Store, Omotesando[表参道]
08. TSUTAYA TOKYO ROPPONGI[六本木]
09. 代官山 T-SITE[代官山]
10. チームラボ[水道橋]
11. 寺田倉庫[天王洲]
12. 日本科学未来館[お台場]
13. 虎ノ門ヒルズ[虎ノ門]

詳 細 http://mediaambitiontokyo.jp



今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。