第2回 新ブランドの誕生、アトリエ・スワロフスキー・ホームコレクション

4月12日から17日までイタリア・ミラノで開催されたデザインウィーク。本来、家具の見本市として始まったため、プロダクトの発表は家具が中心となる。景気が回復しつつあると言われるユーロ圏だが、家具の開発には通常数年かかるため、より短期間で開発でき、生産計画も立てやすいホームアクセサリーに新たな需要を見出す動きが感じられた。

▲ ブレラ地区のパラッツオ・カニョーラで開催されたアトリエ・スワロフスキー・ホームコレクションの展示。


例えば、カットクリスタルで知られるスワロフスキーは、ホームコレクションの新ブランド「アトリエ・スワロフスキー・ホーム」を立ち上げ、初のコレクションを発表した。

スワロフスキーといえば、2002年から12年までのデザインウィークにおいて、「クリスタル・パレス」というプロジェクトを通して名だたる建築家、デザイナーがデザインしたアートピースのシャンデリアを発表してきたことを思い出す。アートピースの制作で培った技術を量産化に適用させ、より多くの人が購入できるプロダクトに展開することは、自然の成り行きだったとスワロフスキー家の5世代目であるナジャ・スワロフスキーは言う。

デビューコレクションは、テーブルとデスク周りに置いて使う実用的なアイテムから構成される。ダニエル・リベスキンド、故ザハ・ハデッド、ロン・アラッド、アルド・バッカー、トード・ボンチェ、トーマス・アロンソ、フレドリックソン・スタラード、キム・トメ、ロウ・エッジズと、デザイン界のオールスターとも言える面々がデザインを手がけた。

著名なデザイナーによるコレクションといえども、それはクリスタルという素材によって、初めて輝きを放つ存在となるようだ。カットクリスタルを大理石や樹脂など異素材と組み合わせることで、よりクリスタルを引き立たせたり、手吹きガラスではないカットクリスタルをモデュール化したり。また、レーザージェットでクリスタルの上に恒久的にプリントが可能なクリスタル・プリントといった新技術が用いられた。

▲ レーザージェットで容器の内側にプリントを施す高度な技術を用いたロウ・エッジズのデザインによるセンターピースコレクション「Printed」。

▲ モデュール化するためのパーツのスタディ。容器というタイポロジーにこだわることより、長方形に近いパーツにカラープリントし、それらを接着することでさまざまな造形への可能性を探るとともに、プリントが全体としてつながることに注力したという。

▲ トーマス・アロンソはスワロフスキーの持つUV接着技術を生かし、クリスタルと大理石を接着したテーブルピース「Prism」を発表。透明なガラスに光が透過することで、プリズムのような色が立ち現れる現象に魅了されたアロンソは、三角柱というプリズムに近い形でクリスタルをモデュール化し、それらを組み合わせた。また、表面に装飾するのではなく、内部から色を放つように接着剤に色をつけ、プリズム効果とともに内部で色が重なり合うテーブルコレクションに仕上げた。透明であることが求められる光学部品用のUV接着材に、あえて色をつけるという発想が新鮮だ。

▲ モデュール化したクリスタルパーツの接着方法、その組み合わせを検討したスケッチ。

▲ ダニエル・リベスキンドによるチェスセット「Architecture & the City」。リベスキンドが拠点とするミラノとニューヨークの地図を描いた大理石ボードの上に、彼の建築をそのまま小さくしたようなチェスの駒。ミラノとニューヨーク、どちらを占領するのか? 鋭くそびえたつリベスキンドの建築は、コンピュータ制御によってクリスタルをカーブ状にカットする同社独自の技術を用いられた。


コレクションは今秋からアトリエ・スワロフスキー・ホームのウェブサイト(http://www.atelierswarovskihome.com)で販売開始。予価は250~20,000ユーロとなる。(文/長谷川香苗)