11月24日、25日開催のアート・クラフトフェア in TAKETA
「わざわざ」大分県竹田市を訪れるべきいくつもの理由。

11月24日、25日に大分県竹田市で「アート・クラフトフェア in TAKETA」 が開かれる。今回、その出展者の選考委員をさせていただいた。「クラフトフェア」については工芸に関わる人間にとっては、論じたいテーマなのだが(かつて漆芸家の赤木明登さんが雑誌『住む。』で『クラフトフェアなんていらない?』というテーマで連載していたことも思い出される)、その話は後日、改めたい。このアート・クラフトフェアに関わることを決めたのは、クラフトフェアではなく「アート」・クラフトフェアであることと、「竹田」という面白い町が主催するからにほかならない。

言葉は面白い。クラフトフェアにアートが入るだけで、ぐっと興味が増した。アートを取り入れるために呼ばれた選考委員は、名古屋でギャラリーを営む「Gallery NAO MASAKI」 (旧Gallery feel art zero)の正木なおさん。若い頃から、工芸とアートを確固たる信念で、世に説いてきた素晴らしい感覚を持つキュレーターであり、運営者だ。そして、もうひとり。公務員を経て、群馬で工芸ギャラリーを開き「クラフトフェアは行ったことがない」というギャラリー「あかまんま」 の田口和幸さん。ふたりとも、竹田の面白さに惹かれて、選考委員を務める決心をしたようだ。

大分の片田舎の小さな市、竹田。滝 廉太郎が「荒城の月」を着想したと言う岡城跡で有名だが、その魅力は、城下町の風情と、そこに暮らす個性豊かな人によるところが少なくない。竹田市はお世辞にも交通の便は良いとは言えない。大分駅から電車で70分。熊本寄りなので、熊本空港からバスで2時間。同じ大分県の他市から来るにしても、ついでに寄れるところがあまりない。だが、「わざわざ」行くから楽しい、ということもある。そんな、わざわざでも行きたくなる場所と人を少々、ご紹介したい。

有名なところでは、長湯温泉。世界有数の炭酸水で知られる。なかでも藤森照信建築で知られる「ラムネ温泉」 はユニークな設計で、外観も面白いが、中に入っての居心地の良さは格別で、まさに「長湯」を楽しみたい温泉だ。

▲長湯の無料露天温泉、ガニ湯。壁はどこにもありません。

このラムネ温泉を経営するのが大丸旅館。大丸旅館のほかカジュアルな長期滞在型の宿「B・B・C 長湯」は全室が別棟。街中から車で20分ほどの温泉地を満喫するのには最高の場所だ。

▲大丸旅館。女将が美しい花をいつも活けている日本旅館。ちょっと贅沢して泊まってみたい。

街の中の面白い場所としては、竹田市立図書館が挙げれられる。伸び伸びとしたスペースと、要所要所にアートを感じさせる箇所が見受けられる。肝心の本のセレクトもこだわりを感じる。「この図書館のために竹田に住みたい」と、思わせる場所だ。残念ながら写真を撮り損ない、こちらに載せることができないが、竹田に行かれたら、ぜひ立ち寄っていただきたい。

もうすぐオープンする「草刈バー(仮称)」にも期待を寄せている。ここは「竹田美學」を主催する草刈 淳(書家としての名前は草刈樵峰さん)さんが元カメラ店を改装し古道具店として営んでいるスペースを、バーにする予定だそうだ。草刈さんは書家でもある骨董商。その骨董を見つけるセンス、入手への飽くなき努力は多くの人を惹きつけている。

▲この1階が古道具屋。2階にバーができる予定。

▲1階の古道具店。準備中で不規則営業中。11月24日は営業予定とか。

▲草刈さん(中央)を挟んで、 アートクラフトフェアの審査員の田口さん(左)、正木さん(右)。ふたりとも空間の仕事もするので、草刈さんの言葉に興味津々。

今回のアート・クラフトフェア in TAKETAでは、美術ユニット「オレクトロニカ」が、会場構成を担当している。ここにも今回のこだわりが感じられる。オレクトロニカは、骨董商でありデザイナーでもある猿山 修さんを招致してものづくりを企画したり、美術館での発表などもしているアーティストだ。自身が主宰する「傾く家」というギャラリーを持っているので、開いているタイミングを見計らって、彼らのセンスを体感してほしい。

▲オレクトロニカのギャラリーに向かう道しるべの看板。

▲ギャラリー「傾く家」内部。

▲オレクトロニカのふたり。アート・クラフトフェア会場をどう調理してくれるか、楽しみ。

最後に、隠れた名所と私が思っているところをご紹介したい。白水ダムだ。ダムの女王とも呼ばれる戦前につくられたダムは計画から7年。着工から4年半を経て昭和13年に完成した農業用のダムだ。ダムに向かうには、心細くなるほどの寂しい道をわずかな道しるべに従って行くしかないのだが、それゆえに、このダムを眼前にした時の感動は、目にした人にしか解らない。

▲白水ダム。水量によって、この風景は見られないこともあるらしい。農業用として、今も現役。

このほかにも、まだまだお伝えしたいことがあるが、それはぜひ、ご自身で竹田市に足を運んで。百聞は一見に如かず。そして「わざわざ」また行きたくなる場所であることがお分かりになると思う。

11月24日(土)、25日(日)は初めてのアート・クラフトフェアが新しくできた、竹田市総合文化ホール「グランツたけた」で開かれる。出展作家27名とクラフトフェアとしてはこじんまりとした規模だが、その分、ひとりひとりとじっくり話ができる。屋内なので、天候にも左右されない。この2日間は市内に特別バスも運行される期間だ。ちょっと遠いな、と思った方でも、思い立って訪ねると、小さな冒険の気分が味わえ、思い出深い日になると思う。

前回のおまけ》

▲工藝ギャラリー Kiriyama OPEN 11:00-17:00 不定休 〒878-0145 大分県竹田市大字米納字紙漉1389

リビング・モティーフで開催した「日本の道具 ごはん上手、うつわ上手」展でご紹介した、桐山浩実さんも竹田住民。奥様が「工藝ギャラリーkiriyama」を開いていて、桐山さんの竹籠や桐山さんが信頼する工芸家の品物が購入できる。

アート・クラフトフェア in TAKETA

開催日時
2018年11月24日(土)・25日(日)、両日10:00~17:00
会場
竹田市総合文化ホール グランツたけた
〒878-0024 大分県竹田市大字玉来1番地1
問い合わせ先
竹田市役所文化政策課内「アート・クラフトフェア in TAKETA」事務局TEL 0974-63-4837(平日8:30~17:00)bunka@city.taketa.lg.jp