あなたの味覚を試す!
最先端な料理が楽しめるシンガポールのレストラン5選

世界中がインターネットで結びついた現代、急速に国際化しているのが「食」の世界。シェフたちは、世界中を食べ歩き、新しい技術の習得や食材の発見に余念がなく、その成果としての自分の料理を世界中に発信しつづけています。異なる場所で異なる経験を積んだシェフ同士がコラボレーションを行い、新しいセンスの地平を開拓することも増えてきました。

その背景にあるのはイギリスの飲食業界誌「レストランマガジン」が毎年発表する「世界のベストレストラン50」という、グルメ界のアカデミー賞とも称されるレストランのランキングです。「ワールド編」は分科した「アジア編」「ラテンアメリカ編」を包括した、まさに世界ナンバーワンを決めるためのランキング。1500人とも言われる審議員が世界中を食べまわり投票する形式で、ソーシャルメディアが盛り上がるごとに、年々影響力を増し、ミシュランガイドと双璧をなす存在になりつつあります。これまではプロがプロを評価する時代でしたが、今では、レストランと、そこに訪れた消費者までもが一体となって、新しい評価の流れを作っているのです。

スペインの実験的レストラン『エル・ブジ(El Bulli, 現在は閉店)』で研究された分子料理の成果によって大きく発展した調理技術や、ノーマ(noma, 現在移転準備中)に代表される新北欧料理のテロワール(食材がとれる土地の風土)を徹底的に生かす姿勢、そして、新しい味を作り、これまでの味覚を拡張しようとするシェフたちの熱気が世界中にホットスポットを作っています。

日本も対象国に含まれる、ベストレストランのアジア編に目を向けてみると、2017年のトップ10レストランの中には、東京、上海、シンガポール、バンコクのレストランがランクインしています。そこで最多の3店舗をランクインさせている都市がシンガポールです。

中国南部料理、南インド料理、マレー料理をベースにしたシンガポール料理は、外食を主とする消費環境で豊かに発展を遂げています。食材の9割を輸入品に頼るお国柄か、シンガポール国内では食材が多様化しているのです。

今回は、そんなシンガポールのなかでも、世界基準の意識を持ち、クリエイティビティに富んだ味やサービスを追及しているレストランを5つ紹介します。

1. オデット(Odette)

シンガポールで今一番勢いを感じさせるのが、ナショナルギャラリーの一角にオープンしたオデット。モダンフレンチレストラン『ジャーン(JAAN)』出身のジュリアン・ロイヤーが腕をふるいます。2017年の「アジアベストラストラン50」では9位に入りました。これは、2017年にはじめてランクインしたお店の中では最高位です。

▲北欧のエッセンスを感じる、ピンクベージュをキーカラーにしたモダンな店内

「アボカドのコンポジション」「ビーツのバリエーション」「鳩のすべて」といったメニューでは、核となる食材を据え、そこから他の食材を放射状に構築していく手法の料理と「鯖とルバーブのスープ」「タイのエスプリを利かせたイシビラメ」など、これまで一緒に食べたことのないような、新しい食材が組み合わされた料理があります。

▲タイのエスプリを利かせたイシビラメ。ココナッツとターメリックのソース、ライムの葉がアクセントになっています。

一方、半熟卵を掘り起こしながら、中に隠れたイベリコ豚を探し出して食べる、素直な食材の組み合わせの一皿もあります。ただしそのような場合でも、遊び心は忘れません。卵のケースにスモークを焚くプレゼンテーションで、視覚的な楽しさを演出してくれます。美術館で展覧会を観た後に、オデットで食事をすると、また別の展示をみているかのような、楽しい気分に浸ることができます。

▲卵のケースからスモークが溢れ出る嗜好を凝らしたプレゼンテーション。

オデット(Odette)

所在地
1 St Andrew’s Rd, 04 National Gallery, Singapore 178957

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URL
http://www.odetterestaurant.com

2. ティップリング・クラブ(Tippling Club)

ティップリング・クラブは、「驚きや遊び心」を提供することにエネルギーを注ぐレストラン。

特に力を入れているのがカクテル。メニューからカクテルをオーダーすると、まず、香りのついたムエット(香水売り場などで見られる匂い紙)が運ばれてきます。ムエットにはカクテル名が書かれ、裏面には味を想起させる材料が書かれています。このムエットから、自身の鼻とインスピレーションを用いて飲むものを選びます。

▲これらのムエットからインスピレーションを感じたもの注文します。

料理は新しいテクスチャーを試したり、既知の料理の再構築したりするものが主です。

たとえば、りんご、ナッツ、デーツ、フォアグラといった食材それぞれを濃縮させ、すべて異なる食感で仕立てて掛け合わせたり、白身魚にポテトチップスとビネガーの揚げ玉をちりばめて、フィッシュアンドチップスを再構築したりしています。メインではA4ランク和牛に海ぶどうを組み合わせたりするなど、日本人にもとても物珍しく映る料理を提供しています。

▲和牛に海ぶどうが添えられたメインディッシュ。

▲デザートで出てくる「ストロベリーチーズケーキ」は、なんと錠剤! 味だけでなく、食べ方にも新しい提案があります。

また、リゾットが人気のランチも好評で、以前には「マクドナルドのビックマック味のリゾット」を出したりしていました。そんな遊び心から、昼夜を問わず注目を集め続けています。

ティップリング・クラブ(Tippling Club)

所在地
38 Tanjong Pagar Road, Singapore 088461

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URL
http://www.tipplingclub.com/

3. バーント・エンズ(Burnt Ends)

バーント・エンズは、スペインにある世界的に有名な熾火焼き(炎のあがらない状態の、赤く熱された炭で火入れする炭火焼)のレストラン『エチェバリ(Extebarri)』で修行したシェフ、デイブ・ピントが提案するバーベキューのお店です。

キャビアをのせた、小さな小さなうずらの卵から、豪快な牛肉まで、窯の熾火の熱を巧みに操り調理していきます。脳天直撃のピュアなおいしさをついてくるバーベキューソースを絡めた牛肉にピクルスをのせたトーストや、濃厚なブラウンバターをまわしかけ、ヘーゼルナッツを散りばめたポロネギ(西洋ネギ)は言葉にならないおいしさ。

▲熾火でふんわりと加熱した茄子の瑞々しさをフライにして閉じ込めています。唐辛子がアクセント。

▲濃厚なバターソースが、ポロネギのジューシーさを引き出しています。

メインとなる豚バラのチョップは、端から端まで、赤身と脂身の比率が変化していくように細長く切り取られ、5mm幅の薄さにスライスされています。これを、りんごとラズベリーのペーストと合わせながら1枚1枚順に口に入れていくと、肉と脂の細やかな味のグラデーションが口の中に広がります。

▲豪快に食べたいほど脂ののった豚バラを、細かくスライスしています。肉+ソースというシンプルな姿ですが、新しい味わい方の提案をしています。

奥に長く伸びた店内の中でもっとも人気の席は、やはりカウンターキッチン。轟々と燃える窯を使った妙義をみながらする食事は、目と鼻の両方で楽しむことが出来ます。

バーント・エンズ(Burnt Ends)

所在地
20 Teck Lim Road, Singapore 088391

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URL
http://www.burntends.com.sg/

4. コーナー・ハウス(CORNER HOUSE)

「ガストロ・ボタニカ」を標榜するこの「コーナー・ハウス」というレストランは、シンガポール植物園の中にあります。

▲店舗は、シンガポール植物園のアシスタントディレクターをしていた植物学者E. J. Hコーナーの元邸宅を改装。店名の「コーナー・ハウス」はこれが由来になっている。店内は、ダイニングだけでなく、読書室やベランダにまで席を構えており、旧知の友人宅に招かれたような心地よさがある。

シェフのジェイソン・タンは、邸宅の所有者にならうようにして、野菜をさまざまな方法で検証した上で料理として提供しています。たとえば、旬のトマトの表情を捉えるために、彼はトマトをカット/マリネ/コンフィ/ソルベと異なる方法で仕立てた上で、ヴィンテージのシェリーをかけてひとつにしたり、オニオンの多面的な魅力を引き出すために、ひとつのオニオンを、4つの異なるアレンジで調理したりします。

▲複数の調理法で、テクスチャーに変化をつけたトマトのバリエーション。オニオンも、ひとつの食材を工夫して使い、いくつもの異なった料理にしています。

60℃のオーブンで最大限甘みを引き出したチップス、練り上げ旨みを凝縮したペースト、半熟卵を落とした濃厚なスープ、そして、オニオンのフォームをのせたアールグレイティー。ここでは、すでに知っている食材の魅力を再確認するとともに、いままで全く知らなかった新たな発見ができるはずです。

▲メインはトリュフやきのこ、アーティチョークをあわせたフレーグラ(粒状パスタ)。

また、このレストランではベジタリアンの方でも楽しめるように、肉や魚をつかわない「メニューボタニカ」というコースも用意されています。

コーナー・ハウス(CORNER HOUSE)

所在地
1 Cluny Road, EJH Corner House, Singapore Botanic Gardens (Nassim Gate Entrance), Singapore 259569

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URL
http://www.cornerhouse.com.sg/

5. トゥーエーエム:デザートバー(2am:dessertbar)

「夜中2時までデザートが食べられるお店」をコンセプトにした、ジャニス・ウォンが手がけた最初のお店がこのトゥーエーエム:デザートバー。新宿のNEWoMan(ニュウマン)にも出店しているこの店では、ドリンクをペアリングした皿盛りデザートのコースがいただけます。コースは3皿、5皿、7皿から選ぶことができ、ちょっと試してみたい方から、甘いものに目がない方までが満足できる構成です。

ジャニス・ウォンのデザートの特徴は、クリーム、ゼリー、クランブル、アイス、マシュマロ、パフ、ソース、チップス、スポンジ、メレンゲ…と沢山のテクスチャーを組み合わせる圧倒的な手数の多さにあります。「温かいティラミス」「チーズパン粉(パン粉のついたチーズケーキと豆腐スープ)」など捻りのあるメニューのほか、シンガポールらしい食材パンダンを使ったアイスにピスタチオ、ココナッツ、ディルをあわせた「グリーンの階調」には、アジアの香りを感じます。

皿盛りデザートの他にも、チョコレートボンボンやクッキー、大福餅などのお菓子もあり、こちらはお土産としてナショナルミュージアム店、パラゴンショッピン
グセンター店でも購入でます。特にチョコレートには、「バーベキューポーク」「マンゴーカレー」など、チョコレートのフレーバーとは思えないような、驚きのあ
るラインナップが揃っています。

トゥーエーエム:デザートバー(2am:dessertbar)

所在地
21A Lorong Liput, Holland Village, Singapore 277733

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URL
http://www.2amdessertbar.com/

現在進行形でアップデートされている現代料理は、新しい味覚や身体感覚を開いてくれる驚きと楽しみがあるジャンルです。味だけでなく、盛り付けや、提供の仕方も工夫されているので、刺激的な体験になるはず。旅行の際には、ローカルフードだけでなく、世界照準の料理も楽しんでみてはいかがでしょうか。