技術革新と廃棄物の微妙な関係

見てのとおり、信号機です。マテリアルとしても、かなり魅力のあるモノですが、技術の進歩で、照明器具はLEDに変わってきています。

全国の信号機をLEDに変更することで、省エネにもなり、買い替えの少なさから廃棄物の削減にもなり、環境に対しては良い効果がたくさんありそうであることは容易に想像がつきます。しかし、思わぬ弊害も。皆さんも、電球の温度が上がり、下にいると暑い、電球交換しようとしたら熱いなどの経験があると思いますが、LEDになるとあの熱さが低減され、エアコンの効きも良く、快適な空間が実現できます。しかし、あの熱で溶けていた雪が溶けずに残り、雪国では信号が見えない事象が続出しています。現地の方にとっては笑い話にもなりません。おそらく、多くの方を悩ませていたあの熱が、思わぬところで役に立っていたという事実。多面的な事象として、ひじょうに興味深いです。

次に、蛍光灯についてです。ナカダイは、蛍光灯をリサイクルする前段階の処理を行うことができる機械を所有しており、毎月数トンの蛍光灯をリサイクル処理しています。

蛍光灯には微量ですが水銀が含まれています。数本割ったぐらいでは人間には影響がないと言われていますが、全国で販売、使用されている蛍光灯で使われている水銀の総量を考えると、あまり安心してもいられません。2017年10月から、蛍光灯は原則埋め立て処分ができなくなりました。すべてリサイクルすることが義務付けられたようなものです(厳密には少し違うのですが、実質は埋め立て禁止のようなものです)。しかし、日本で水銀のリサイクルをできる会社は北海道の野村興産という会社のみ。

この一社で、過去とこれからの日本中の蛍光灯の面倒をすべて見ろというのは難しい注文です。水銀による大きな公害を未然に防ぐという側面から、私たちの生活に必要な“明かり”が、別の商品で得られるのであればそちらを推奨するという国の方針だと感じます。今では当たり前に支払う自動車や家電のリサイクル料金。自動車リサイクル法、家電リサイクル法が施行された背景も、リサイクルを推進すると同時に、大量に買い替え、廃棄が起こるこれらの商品の埋め立て処分をなくさなければ、国土が海に囲まれた日本に埋め立てる場所がすぐになくなってしまうという危機的な状況があったからです。

最後に、今はあまり見なくなったブラウン管のテレビやモニター。ナカダイには、それでもたまに入ってきます。私が入社したころ、2000年前後はちょうど液晶やプラズマなどの画面への買い替えが起こり、ナカダイでもたくさん取り扱っていました。ブラウン管は映像を投影するために鉛ガラスが一部使用されており、すべて埋め立ててしまうと、その鉛が雨水などで流れ出て地下に浸透し、公害に発展する可能性がありました。当時はガラスリサイクル業者がほぼ完璧にリサイクル処理をしていました。しかし、廃棄として出てくる量が激減し、当然それらをリサイクルするための設備を維持するガラスのリサイクル業者もいなくなり、今では、ブラウン管のリサイクルは国内で行われていません。ほぼ海外に輸出されていると聞きますが、海外でもいまやブラン管テレビを製造しているところがほとんどなく、行き場を失っているとも聞きます。

技術革新と廃棄物はセットで考えなくてはなりません。私たちは自らの生活を便利にするためにたくさんの新商品を生み出します。新しく生み出される新素材のリサイクル、廃棄の仕方はもちろん、市場から撤退していくモノの最後にも責任を持たなくてはなりません。

 “次を考える価値観”の共有は、待ったなしのところまで来ていると感じています。私たち消費者はもちろん、企画、生産、販売、催事などの、すべてのシーンにかかわる人が、また自分のところに戻って来る(戻す)、そのために行動する“循環”を前提とした価値観を共有する社会の実現を目指したいと思っています。End