光によるアートの新たな解釈 コンラッド大阪

▲地下一階エントランスの天井中央には、松尾高弘さんの作品「Prism Chandelier」が設置されている。

2017年6月に開業したコンラッド大阪。ヒルトンホテルグループの最高ブランドが今回目指したのは日本人のデザインによるラグジュアリーです。内装デザインは橋本夕紀夫さんと日建スペースデザイン、全フロアの照明計画をワークテクトが行なっています。特徴的なのは多くのアート作品が設置されていること。インテリアデザインとアート、照明デザインがどのようにホテル空間へ施されていったか、照明の視点から探ってみました。

▲客室階の廊下。光が楕円状に広がるレンズを使用している。

照明デザインスタジオ、ワークテクトはこれまでにも多くのホテルを手がけてきていますが、コンラッド大阪の象徴的なアートやテーマが強調されたスペースへの提案には、従来にない手法を用いたとのこと。客室階の廊下のカーペット中央に描かれた模様にフォーカスした光の演出は、橋本氏から渡されたテーマ「天の川」への提案です。

▲レストラン「アトモス・ダイニング」のテーマは「水」。水の波紋を天井に映し出すイメージでという橋本氏からのリクエストに対して、下から天井造作に向けて光を当て込む手法で対応した。

▲アーティストの名和晃平さんによる作品「Fu/Rai」。80灯以上の照明を使用し演出している。

そして、注目はロビー入り口に鳥居のように設置された、風神雷神をイメージした名和晃平さんによる「Fu/Rai」。ワークテクトの担当者は名和さんの工房での打ち合わせを重ねたと言います。クリスタルビーズで構成された球体の影を出さないようにというリクエストに対して、「アートに当たっている光にさらに光を当てて影を相殺した」とのこと。あらゆる方向から照射し高層ホテルならではの浮遊感を出していったそうです。ロビー全体の温かみのある光色に対してクリスタルビーズの青みがかった色を最大限表現できるようにという名和さんからの要望に対して、白色光を採用し、光で境界をつくり上げることに成功しました。

▲「Fu/Rai」をロビー内側から見る。ホテル内にはさまざまなアーティストの作品が設置されている。

その他のアートと照明演出を見もて、光を媒介に新たなアートの解釈を行なっているといえそうです。テーマ性の強いインテリアデザインとアートワークにより、ホテル全体の輪郭ができ上がっていったコンラッド大阪。訪れる人たちにとって深く印象に残る場所となっていくことでしょう。End

写真 : ナカサアンドパートナーズ
取材協力 : 株式会社ワークテクト