現在フランス・パリで開催中!注目のデザイン・美術展5選
【2018年1月版】

年に2回、パリで開催されるメゾン・エ・オブジェ。今年の1回目の開催は1月19日~23日です。会期中のパリでは、デザインやグラフィック、アートに関心のある方々が楽しめる展覧会がたくさん開催されています。今回は、パリに訪れたら立ち寄りたい、注目の展覧会を5つご紹介します。

「コンスタンス・ギゼ デザイン、アクション!」展/パリ装飾芸術美術館

Ensci(国立高等産業デザイン学校)の卒業後、わずか10年でフランスの重要なデザイナーのひとりとなったコンスタンス・ギゼ。彼女の創作活動をふりかえる展示が今、装飾芸術美術館で行われています。デザイン、イラストレーション、舞台美術、パフォーミングアーツ、ビデオ……とさまざまな表現手段をもったギゼの作品は、鑑賞者の視点を変え、イリュージョンを作り出し、感情を駆り立てるものばかりです。

装飾芸術美術館の1000㎡を超えるスペースを活用した今回の展示は、デザインと舞台美術という2つのテーマを大きな軸としつつ、ギゼの作品と創作のプロセスを明らかにしていきます。

展示方法にもご注目! 中世やルネサンス時代の展示物が置かれた部屋にギゼの家具を配置するなど、対話がうまれることを意図した彼女の工夫が溢れています。

▲Vertigo lamps, 2010 and 2013 Publ. Petite Friture, image © Constance Guisset Studio

「コンスタンス・ギゼ デザイン、アクション!」展

会期
開催中~2018年3月11日(月曜休館)
会場
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詳細
公式ページ(英語)

「アーヴィング・ペン」展/グラン・パレ

20世紀最大の写真家のひとりと称されるアーヴィング・ペン。彼の生誕100周年を記念した大規模な回顧展が、グラン・パレとニューヨークのメトロポリタン美術館の共同事業として行われています。

70年にも及ぶペンのキャリアを、静物、ファッション、ポートレート、ヌード、タバコといったテーマにまとめ、235枚を超える写真とドローイングで迫ります。

「カメラをストラディバリウスか、外科手術用のメスのように扱う」と語るペンの写真は、レンズを通して対象を力強く捉え、その本質をえぐります。ピカソやカポーティーといった著名人を前にすれば、そのキャラクターを引き出し、シェフや消防士を写せば、それぞれの職業に備わる気質を取り出します。

会場では、VOGUEの仕事で訪れたペルーで、民族衣装を纏った人々を捉えるペンのシューティング風景が動画で紹介されたり、実際に使っていたバックシートが展示されるなど、作品制作の舞台裏も覗けます。なお、物販コーナーの最後に、ペン風の写真がとれる証明写真機が設置されているのも、ちょっとしたお楽しみです。

▲アーヴィング・ペン《煙草をくわえた女性(メアリー・ジェーン・ラッセル)》ニューヨーク(1951年) © Condé Nast

「アーヴィング・ペン」展

会期
開催中~2018年1月29日(火曜休館)
会場
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「アンドレ・ドラン 1904-1914 ラディカルな10年」展/ポンピドゥー・センター

フォーヴィスムとキュビスムの立役者として語られるアンドレ・ドラン。本展は第一次大戦前までの画業に焦点を当てています。

オレンジをキーカラーとした強い色彩で魅了する初期作品にはじまり、ロンドンの風景画シリーズや、セザンヌの重要なテーマ(水浴するひとびとや静物)を自らのものとして消化したものなど、絵画、版画、彫刻、デッサンといった作品群を通してドランの作風の過渡期を追うことができます。作品制作のインスピレーションとなっていた、マオリ族の置物など、ドランのコレクションも展示されており、その創作世界を満喫できますよ。

なお、本展のチケットで、「セザール」展や常設展も観覧できるので、21時までの夜間開館を活用し、ポンピドゥー・センターをゆっくりと楽しんでみてください。

▲アンドレ・ドラン《ダンス》 © Adagp, Paris 2017

「アンドレ・ドラン 1904-1914 ラディカルな10年」展

会期
開催中~2018年1月29日(火曜休館)
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「ドガ・ダンス・デッサン:ポール・ヴァレリーとともにドガへ送る賛辞」展/オルセー美術館

ドガといえば、踊り子が描かれた作品を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。本展ではその踊り子を含むひとや動物の「動き」に注目しています。

19世紀末に連続写真が撮影できるようになったことで、それまで人間の目では捉えられなかった「動き」が新たに発見されました。ドガもその写真に魅了された作家のひとりで、同じ主題を異なるポーズで作品にしています。展示室では、踊り子や馬の彫刻が、いくつものポーズをとり、連続写真を再現するかのように一線に置かれ、ドガの作品が持つ「動き」を浮かび上がらせています。

▲連続写真のように並べられる彫刻。展示の仕方も工夫されています。

また本展は、長きに渡りドガの作品に言葉を寄せて来たフランスの詩人ポール・ヴァレリーを案内役として、彼の著書『ドガ ダンス デッサン』の言葉を拾いながら、ドガの作品を紐解いていきます。この点では、まるでヴァレリーと話をしながら観ているような展覧会です。

▲エドガー・ドガ《腰掛けた踊り子》© RMN-Grand Palais (Musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski

「ドガ・ダンス・デッサン:ポール・ヴァレリーとともにドガへ送る賛辞」展

会期
開催中~2018年2月25日(月曜休館)
会場
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公式ページ(英語)

「ダダ・アフリカ 非西洋の源泉と影響」展/オランジュリー美術館

1910年代の半ば、第一次世界大戦に対する抵抗感や厭世感から起こった芸術運動ダダ。チューリヒにはじまり、ベルリン、パリ、ニューヨークと同時多発的に広がっていったこの動きは、それまでの芸術運動が立脚していた西洋文化や芸術形式に反発し、アフリカやオセアニアといった非西洋の文化を、その創作の源泉として取り入れていきました。

本展では、ハンナ・ヘッヒ、ジャン・アルプ、ゾフィー・トイバー=アルプ、マルセル・ジャンコ、ヒューゴ・ボール、トリスタン・ツァラ、ラウル・ハウスマン、マン・レイ、ピカビアなどの作品を通じて、彼の地のエッセンスがどのように現れるかを探っていきます。

ダダの作品は、アッサンブラージュやコラージュ、フォトモンタージュ等を用いており、テーマだけでなく手法までがハイブリッド。改めてそこに着目してみると、溢れる情報の中で生きる私たち現代人にこそ刺激になる、創作のヒントを与えてくれそうです。

▲ゾフィー・トイバー=アルプ 《抽象的モチーフ(マスク)》(1917年)© Stiftung Arp e.V., Berlin / Rolandswerth. Wolfgang Morell

「ダダ・アフリカ 非西洋の源泉と影響」展

会期
開催中~2018年2月19日(火曜休館)
会場
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公式ページ(英語)

5つの展覧会の中で、気になったものはありましたか? パリにはたくさんの美術館があるので、いつ訪れても興味深い展示を観ることができます。この記事で紹介した展覧会が冬のパリで過ごす時間を豊かにするきっかけになれば幸いです。