​ファッション好き必見!
2018年にパリ・ロンドン・ニューヨークで開催される注目のファッション展4選

ドリス・ヴァン・ノッテンやマノロ・ブラニクなど、ファッションの分野で活躍するデザイナーを取材したドキュメンタリーが立て続けに公開され「デザイナーの仕事」に注目が集まっている昨今。本記事では、実際にファッション・デザイナーの仕事に触れられる注目のファッション展を、流行の発信地であるパリ、ロンドン、ニューヨークから4つセレクトしてご紹介します。

「マルジェラ/ガリエラ 1989-2009」展 / パリ市立ガリエラ美術館・モード&コスチューム博物館

▲Martin Margiela, waistcoat, Spring-Summer 1990. Made from slashed posters overlaid on a cotton base. © Françoise Cochennec / Galliera / Roger-Viollet

まずはパリより、今月頭からスタートしたばかりのマルタン・マルジェラの回顧展をご紹介します。マルジェラは、脱構築的な手法を軸にしたコンセプチュアルなデザインで、狂信的な支持を集めたファッション・デザイナー。ブランドから退いた今でも彼はファッションの世界において強い影響力を持ち続けていますが、この展示ではそれを実感することができるでしょう。

マルジェラがメゾン・マルタン・マルジェラのデザインに関わっていたのは、ブランドを設立した1989年の春夏コレクションから2009年の春夏コレクションまで。本展では、20年にわたって衣服の構造を問い、既存のファッションシステムに挑んできた歩みを、130着の作品やランウェイの映像、メゾンのアーカイブスを通して紹介。

衣服の比率を200%に引き伸ばした「オーバーサイズコレクション」や、着せ替え人形の服を人間のサイズに展開した「バービーコレクション」、ヴィンテージやアンティークの素材を用いて、それらを手作業で新たなものに再構築する「アーティザナルコレクション」など、ファッションの新しい側面を切り開いてきた作品群が一堂に展示されます。

「マルジェラ/ガリエラ 1989-2009」展

会期
2018年3月3日〜7月15日
会場
フランス/パリ市立ガリエラ美術館・モード&コスチューム博物館
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詳細
公式ページ(英語)

「エルメス時代のマルジェラ」展/パリ装飾芸術美術館

▲Graphisme : Jelle Jespers
© Photo : MoMu Anvers, Stany Dedern

今年は、マルタン・マルジェラの世界を堪能できる年と言えるかもしれません。パリではもう一つ、マルジェラの展覧会が開催されます。この「エルメス時代のマルジェラ」展は、昨年にアントワープのモード博物館で開催され、大きく話題になりました。気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんな注目の展覧会がこの夏、パリにも巡回します。

マルジェラは、自身のブランドのデザインをする傍ら、1997年から2003年にかけて、エルメスのデザイナーも兼任していました。本展は、その「エルメス時代」のマルジェラのデザインを、メゾン・マルタン・マルジェラで行っていた同時期のデザインと並べて展示することで、マルジェラがファッションに対してどのようなアプローチをしようとしていたのかをあぶり出そうとしています。

会場では、エルメスでデザインされたものはオレンジのステージに、メゾン・マルタン・マルジェラでデザインされたものは白のステージにそれぞれ配され、両者の結びつきや関係性について対照的に捉えられるような仕掛けになっています。定番の白シャツから、腹部まで届くV字のカッティングが特徴的なトップスまで、各々のデザインが、2つのブランドのあいだでどのように変化するのかについて目を凝らせば、マルタン・マルジェラのデザインの根幹に迫れるかもしれません。

「エルメス時代のマルジェラ」展

会期
2018年5月22日〜9月2日(月曜休館)
会場
フランス/パリ装飾芸術美術<GoogleMapでみる
詳細
公式ページ(フランス語)

「アズディン・アライア:クチュリエ」展/デザイン・ミュージアム(ロンドン)

▲A&V – Alaia Galleria Borghese

昨年11月、77年の生涯を終えたアズディン・アライア。その訃報はすぐにファッション業界をかけめぐりました。彼は、どれだけ評価され、成功を手にしても、スケッチからフィッティングまですべての工程に携わり、最後まで針と鋏を手放さなかったといいます。そんな彼の偉業に、この夏、ロンドンで触れることができます。

アズディン・アライアは「ボディコン」とよばれるデザインで、ファッション史の変革点を生み出しました。女性のボディラインをなぞる完璧なフィッティングで、新しいシルエットを見つけ出したアライアですが、彼が彫刻も手がけていたことを知れば、身体への関心の高さと、そのデザインがもつ力強い造形にも納得がいきます。

広告を出さず、一時はファッションショーまで取りやめ、時代に逆行していたかのようにみえるアライアですが、自身の追い求めるデザインを実現するために、ビジネスにおいても取捨選択をして、クリエーション全体を洗練させていきました。自身の作品のほかにも、特別に制作を依頼したコンスタンティン・グルチッチやマーク・ニューソンの作品が展示されますが、これらは、生前アライア自らが収集に携わっていたそうです。

なお本展に先立って、すでにパリでは、アライアの店舗兼アトリエで41着のドレスを展示した回顧展「アズディン・アライア 『私はクチュリエ』」(〜6月10日まで)が開催されています。

「アズディン・アライア:クチュリエ」展

会期
2018年5月10日〜10月7日
会場
イギリス/デザイン・ミュージアム<GoogleMapでみる
詳細
公式ページ(英語)

「神々しい身体:ファッションとカトリックの想像力」展/メトロポリタン美術館(ニューヨーク)

▲© 2018 The Metropolitan Museum of Art

ニューヨークで最も重要なソーシャルイベントであると同時に、メトロポリタン美術館のファッション部門の資金集めとしても重要視されるMETガラ(メットガラ)。

本イベントは、『VOGUE』編集長アナ・ウィンターが主催となり、毎年5月に同美術館で開催される展覧会のオープニングイベントとして行われます。昨年日本でも公開された「メットガラ ドレスをまとった美術館」というドキュメンタリーが記憶に新しい方もいらっしゃるのではないでしょうか。この「神々しい身体」展で、今年のMETガラは行われます。

▲メットガラ ドレスをまとった美術館(予告編)

これまでファッションとキリスト教は相互に絡み合い、刺激を与えあってきました。両者の関係は複雑で、ときに衝突することもありますが、だからこそファッション史において革新的なデザインを生み出してきたともいえます。

本展では、20世紀から今日まで、ファッション史を作ってきたデザイナーたちーークリストバル・バレンシアガ、ココ・シャネル、クリスチャン・ラクロワ、ドルチェ&ガッバーナ、ジョン・ガリアーノといった面々ーーの作品150体を、同美術館が所蔵しているビザンチンや中世美術のコレクションとともに展示することで、両者の緊密な関係を明らかにしようとする試みとなっています。

また、今回は特別にこれまでほとんどバチカンの外に出たことのない、システィーナ礼拝堂が所蔵する40体の祭服も展示。宗教におけるデザインがキリスト教的想像力の構築にどのように寄与してきたかにも迫っていきます。

▲展示プレビュー動画(メトロポリタン美術館Webより)

「神々しい身体:ファッションとカトリックの想像力」展

会期
2018年5月10日〜10月8日
会場
アメリカ/メトロポリタン美術館<GoogleMapでみる
詳細
公式ページ(英語)

ファッションは、日々の生活に必要なものであると同時に、多様な文化に繋がれるという魅力を備えたものです。美術館で行われるファッション展は、アート、デザイン、ファッションのいずれかに興味があれば楽しめるのもうれしいですね。この春夏はファッションを軸に、色々な展示に足を運んでみてはいかがでしょうか。