循環型社会に向けて
富士通デザイン「HAB-YU」と凸版印刷「wao」でのイベントより


昨今のニュースで注目を集めている使用済みプラスチックの問題。中国の輸入禁止、大手コーヒーチェーンのプラスチック製ストローの使用中止報道など、私のまわりはこの話題ばかりという感じです。それに伴い、これからの資源循環のあり方や循環社会の構築についてのさまざまな講演に呼ばれることが多くなりました。今回は、ふたつイベントを紹介します。

ひとつ目は、富士通が運営するHAB-YUで開かれた勉強会。コペンハーゲンのFuture Living Lab、Space10のサイモン・キャスパーセン氏とカーベ・ポアー氏とともにゲストとして参加しました。ふたりのイケメンぶりと同時に、彼らのビジョンが写っている写真をご紹介します。

Space10はIKEAが設立したものですが、彼らが日本はもちろん世界中から注目されているのは、IKEAとの資本関係がありつつも、かなりの部分で独立した活動を展開するというミッションを持ち、これからの社会の変化をとらえ、あらゆる可能性を排除せずに、グローバルな視点で各地域の背景をしっかり分析しながら、「循環型社会」実現のための、たくさんのチャレンジしているところにあると感じました。

Space10のサイトを見ると、2050年までに世界は都市化が進み、世界人口の70%が都市に住む(1950年は30%程度)。この分析を是とした場合、モノをつくる、売るマーケットとしては大きなビジネスチャンスである一方、環境に対しては壊滅的なダメージを与える可能性があります。今のままの産業構造で良いのか? これまでの20年のようなビジネス展開で良いのか? テクノロジーで解決可能な都市の形成はできないのか?など、しっかりとした社会課題の分析と、来るべき将来の仮説を繰り返し追及しています。

これまで、すべての産業や企業が環境にダメージを与えようとしたわけではありません。何かをより良くしようと生み出した商品やサービスと、パラレルに発生するのが現代の社会課題です。Space10による、これまでの反省と現代のテクノロジーへの知見、未来の分析を融合させたビジネス展開は、参考になるところが多くありました。特に、環境と経済の融合のプロセスとしては、私自身のこれまでのビジネスを加速させるのに十分な説得力があったと感じています。

もうひとつは」、凸版印刷が運営するオープンイノベーションスペースWAOで開かれた勉強会。より具体的にSDGs、特に目標12、つくる責任・使う責任を中心に講義とワークショップを行いました。SDGsは、まだまだ一般の人たちの認知度は低いとはいえ、ビジネスシーンでは、注目のキーワードになってきています。

しかし、あるべき姿、ありたい姿をビジョンとして共有し、その実現のため、それを阻害する社会課題の解決こそをビジネスとして展開することが求められるSDGsに対し、それらをビジネスのネタに、自社の商品アピールの一環という程度でしかとらえられない企業が多いのも事実です。つくる責任・使う責任のとらえ方という面では、多くの企業が生産ロスの削減、リサイクルしやすい素材の使用など、さまざまな努力をしています。使う私たちも、出来るだけ簡易包装を選択するなどしているかもしれませんが、つくった後の責任、使った後の責任と読みかえてみたらどうでしょうか? 現在は循環しているとは決して言えず、販売後は焼却、埋め立て処分へ直線的に流れているよう見えます。そして、私は、そのことよりも、そういう流れになっているということを、生産者も私たち消費者も知らずに、生産・消費しているという現実こそが問題だと思っています。全産業との取引があると言っても過言ではない凸版印刷(もはや、印刷会社ではない)にとって、全産業のつくる責任・使う責任に果たせる役割はひじょうに大きく、真剣な議論が行われていました。

今回、紹介したふたつの場所。どちらも特定の企業のクローズの場所ではなく、「新しい価値創造」「あらゆるジャンルとの共創」というキーワードで、既存の枠組みを超えた新しいビジネスをつくり出そうとチャレンジでいる場所です。企業のマーケティング、ブランディング、さらには広報宣伝告的要素ではなく、本気で未来の社会をより良くするビジネスを愚直に追求し、生み出す独立性と実行力が求められています。

循環型社会は、特定の企業ではなく、業界を超えて取り組むことが大事ですし、そういう企業、商品を選ぶ私たち消費者の価値観の構築も同時行わはなくてはなりません。社会に実装する具体的な行動へチャレンジしつつ、多くのビジネスにむすびつくために、われわれもお手伝いしたいと思います。End