「生きた建築ミュージアムフェスティバル(イケフェス大阪)」を存分に楽しむための秘訣(前編)

▲大阪市中央公会堂、3階の中集会場回廊部分での展示風景。Photos by Ai Takahashi

2018年10月27日(土)、28日(日)にかけて、100以上の建物が一般公開される「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(以下:イケフェス大阪)」が開催された。イケフェスとは何か、どんな背景で開催されたのかについては、こちらで紹介したが、実際に27日に会場となった大阪市内、主に中之島から本町界隈を歩いた。

▲今年のイケフェス大阪公式ガイドブック。芝野健太氏デザインのオレンジのカバーが印象的だ

当日の様子をレポートする前に、今回学んだイケフェス大阪を十二分に楽しむためのポイントを先に記しておく。すでに来年2019年にも10月26日(土)、27日(日)の開催が決定している。参考にしていただきたい。

・すべての建築物が自由に見学できるわけではないため、パンフレットもしくはウェブサイトでプログラムが発表されたらしっかりと確認することが望ましい。

・フラッと入れる申込不要の建築物をチェックしてマッピングしておくと便利。ルートづくりの参考になる。

・「要申込」の場合、倍率は大変高くなる。ひとりで2名分まで申し込めるため、本当に見学したい建築物はグループでよくよく戦略を練るべし。

・当日整理券を配布するタイプのガイドツアーは午前中に行けば比較的後半の回を抑えやすい。

ともあれ、パンフレットやウェブサイトはくまなく調べて、事前に予定をしっかりと立てていくことを強くおすすめしたい。

大阪市中央公会堂

ツアースタートをどこからにするかは訪れたい場所にもよるのだが、今回は中之島を選択。大阪城や船場といった大阪の歴史的な中心に対して、明治30(1897)年代に入り計画され出現した都市核だ。関西経済の中心として日本銀行が誘致され、その対面に図書館を建築する構想が住友家の寄付を得て実現したという経緯があるのだが、公会堂は大正期に入り個人の寄付によってつくられたものだ。

▲大阪市中央公会堂

まず訪れたのが、1918年(大正7年)につくられ今年100周年を迎えた大阪市中央公会堂。1階にある2層分を使った大集会室が有名だが、27日の時点では残念ながら入れず、3階中集会室で開催されていた展示「中央公会堂と中之島の100年展」そして「みんなの建築ミニチュア展」を見ることができた。

大阪府立中之島図書館

▲大阪府立中之島図書館、正面から

1904年(明治37年)に住友家により建築、寄贈され開館した大阪府立中之島図書館。竣工当初は両翼は存在せず、後年1922年の完成。2015年の指定管理者制度実施後には通常時からガイドツアーも開催されている。実際この日もドームを見上げる見学者の数が多く、ちょうどツアーが開かれている最中だった。

▲2階。エントランス入ってすぐのバロック様式の大階段。撮影する人も多かった

なお、展示室ではちょうどそのタイミングで大林組の創業者である大林芳五郎に焦点を当てた展覧会、「大林芳五郎展~近代大阪の礎を築いた偉人~」が開催、その先の多目的スペースではテキスタイル作品の展覧会「プティ・タ・プティ テキスタイル展vol.2」が開かれていた。

▲3階に位置する「記念室」

▲大阪市中央公会堂付近で見学する参加者

三井住友銀行大阪本店ビル

▲三井住友銀行大阪本店ビル正面から

そんな中之島の発展に大きく寄与している住友ゆかりの三井住友銀行大阪ビルへ。もともとはここが旧住友本社と連携各社の本拠であった「住友ビルデイング」にあたる。1926年に第一期、1930年に第二期工事が完成している。現在でも通常営業している銀行営業室を(もちろん立ち入り禁止区域を設けて)公開。まさに多くの行員さんが働いているんだろうなと思わせるような臨場感を肌で感じることができる。机に置かれた資料もそのまま。ここは写真撮影不可だったが、ステンドグラスが特徴的な共用応接ロビーは撮影もでき、賑わいを見せていた。

▲天井のステンドグラスはアメリカ製。3,635枚のピースからなる

住友ビルディング【整理券取得】

▲現在の住友ビルディング。「新住友ビル」とも呼ばれる

そんな三井住友銀行大阪ビルに道を挟んで隣接する、現在の「住友ビルディング」へ。事前に整理券を受け取って、記載の時間にツアーに参加するというシステム。1時間ごとにツアーが開かれるため、15:00の回の整理券を受け取っておく。

大阪府立中之島図書館【昼食】

▲大阪府立中之島図書館内、スモーブローキッチン

この時点でお昼。昼食はせっかくだったらイケフェスにラインナップされている場所でとろうと思い、中之島図書館へ。2015年に指定管理者制となり、2016年には北欧の郷土料理オープンサンドSmørrebrød (スモーブロー)専門店がオープン。大阪を拠点に「料理開拓人」として活動するfoodscape!の堀田裕介氏が各地で出会った生産者の食材を集めている。オープンサンドが美味しいだけではなく、この雰囲気での食事を目的に訪れていると思しき客も多そうだ。

大阪弁護士会館【ガイドツアー参加】

▲阪神高速高架下からのぞく大阪弁護士会館

13:30。今回初お目見えの大阪弁護士会館のガイドツアーに参加。ガイドツアーでは弁護士会の担当者の他に、2006年の完成にあたって設計を担当した日建設計・江副敏史氏から直接、話を聞くことができた。通常は立ち入ることができない最上階の会議室にて概説。積層されたレンガはタイルでは剥がれ落ちる危険性があることから選ばれた、といった旨の指摘など、設計の隅々にまで配慮した工夫の一端を見るようでもあった。

▲最上階会議室で江副氏自らが設計について解説する様子

また、通常写真撮影不可能な1階ロビーの壁面は、異なる曲率を持つ表面のカーブによる複数種類のレンガを組み合わせることで独特の表情をつくっている。落ち着いた雰囲気を生かす軽やかな心配りが、この表面に現れているかのようだ。

▲写真からはわかりづらいが、表面カーブが異なる複数のレンガが使われている

▲ロビー壁面の裏側の様子。多くの参加者が写真を撮った印象的な風景だ

住友ビルディング、伏見ビル、青山ビルといった建築物への訪問は後編に続く。End