遊びの根源に立ち返る、横浜「アソビル」。
日本で初めての短編映画専門館も併設

▲「アソビル」のエントランス。館内にもいたるところにアートが展示されている。

3月15日、横浜駅直通の立地にオープンした「アソビル(ASOBUILD)」は、アカツキの子会社であるアカツキライブエンターテイメントが全フロアを自社運営するユニークな複合型体験エンターテインメント施設だ。

モバイルゲームをはじめとするコンテンツ事業を展開する同社が、横浜中央郵便局別館をリノベーションし、全6フロア約3,600坪という大きなスペースに、パートナー企業とともにプロデュースしたさまざまな「コンテンツ」を展開。ただしボーリングやカラオケといった従来の娯楽ではなく、スポーツ、ハンドメイド・クラフト、リアル脱出ゲームなど、「ここでしかできない体験」がラインアップされている。

▲横浜中央郵便局別館は、長らく倉庫として使われていた。

600坪のワークショップ空間

例えば、3階のハンドメイド体験フロアは、同社が立ち上げたブランド「モノトリー(MONOTORY)」が運営する。ウェブで募集し、面接を経て契約したアーティスト150名が、20ジャンル200種のワークショップを行う。アクセサリーづくり、陶芸、フラワーアレンジメントといった定番の手芸のほか、レーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションによる作品づくりも可能だ。会員制で本格的に学べるコースもあるが、飛び入りでも参加でき、カルチャースクールより気軽にハンドメイドを体験できるのがウリとなっている。

▲1フロア600坪のスペースは開放的で、角材を使って緩やかに仕切られている。内容や参加人数によって空間をフレキシブルに変えることができる。

▲内容は気軽なアクセサリーづくりから、本格的な陶芸までさまざま。波佐見焼のブランド「HASAMI」のワークショップでは、そば猪口の絵付け体験が可能。

2階の常設体験イベントフロアは、面白法人カヤックとの共同で“インスタ映え”を徹底した体験施設「うんこミュージアム」や、SCRAPが企画運営するリアル脱出ゲーム、また国際短編映画祭を手がけるブランド「ShortShorts」とツクルバが共同で企画したショートフィルムの鑑賞施設が入る。これは、「ザ・ストーリー・ホテル」という設定のもと、俳優がホテルの従業員に扮して宿泊客役の鑑賞者を映画鑑賞に導くというもの。ホテルのフロントで俳優とやりとりするところから「体験」が始まり、ふたり掛けのブースを移動しながら、最大7本のショートフィルムを鑑賞できる。これまで日本で短編映画を専門に扱う映画館はなく、さらにそのなかに演劇という要素を組み込んだことも新しい。

▲「うんこミュージアム」はひたすらこのモチーフがさまざまな形で展開される施設。なんとも強烈なインパクトに圧倒されるが、会場には笑い声が響いていた。

▲ショートフィルム(短編映画)の鑑賞施設「ザ・ストーリー・ホテル」。

▲ホテルのフロントに見立てたエントランスで、俳優にナビゲーションされる。

「コンテンツ」を更新できる柔軟性

屋上にはバスケットボールやサッカーなどのプロスポーツ選手が子どもに直接指導するスポーツコートがあり、1階のグルメストリートには、横浜にゆかりのある有名店が集まる。さらに館内のいたるところに、アーティストの梅沢和木、キム・ソンへ、magma、またデザイナーの清水久和や松村和典によるアートワークが常設展示され、館内すべてが「ここにしかない」体験で埋め尽くされている。

▲1階は横浜に縁ある名店が出店し、グルメ客を取り込む。

デザイン誌「AXIS」198号「鉄道みらい」特集でアートディレクターの河北秀也さんが「三大駅弁」に選んだ崎陽軒のシウマイ弁当。アソビルにできたのは3店舗目の「シウマイBAR(バル)」。

▲地下には、大人のための「遊び場」も。

主力事業では、モバイルゲームなどのデジタルコンテンツを生み出しているアカツキ。アソビルはリアルの世界だが、そこで目指しているのも、モノを売ることではなく、好奇心をくすぐるようなコト(体験)の提供だ。建物のリノベーションでも、ほかの商業施設のようにショッピングを楽しんでもらうための加飾や演出はほとんどなく、内部はスケルトンで、コンテンツに合わせていかようにも空間を変えられる柔軟性が重視されている。遊びはハコよりも中身というわけだ。

まるで空き地を見つけた子どもたちが、自分たちの基地を自由につくり上げるような楽しさ。大人も子どもも「遊び」の原点に立ち返るような、あるいは「エンターテインメント」という言葉を再定義するような施設としてこれからどのように根付いていくのか、注目したい。

▲デザイナーの清水久和さんによる「鏡の髪型 烏帽子三題」。典雅な遊びを知り尽くした平安貴族を烏帽子で表現した。

▲内覧会ではアーティストの若佐慎一さんが壁画の制作を続けていた。