暗闇のなかや目を閉じた状態でも位置が感知できる
次世代のバイオニックハンドが開発中

私たちは暗闇のなかや目を閉じた状態でも、運動中や運動後の手足の位置をすぐに感知することができる。これは、「自己受容能力」という能力が脳にあるからだそうだ。では、手足を失った人の場合はどうなるのだろうか。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校をはじめとする研究チームでは、こうした状況下でも手足の位置が正確に知覚できるこの能力の再現に成功したそうだ。開発したのは、この能力を取り戻せる次世代のバイオニックハンドである。

▲© Luca Rossini

▲© Luca Rossini

この装置では、患者は机の上にある目標物を見ないで手を伸ばし、物体の堅さや形状、位置と大きさまでもわかるのだという。数人がテストを行い、切断した箇所の神経を刺激することで操作ができた。受けた刺激は、神経を通じてすぐにフィードバックされるので、普通の手とほとんど変わらない。

従来の「筋電義手」は、前腕部に残された筋肉をつかって自然な動きを取り戻そうとするものだった。だがこのタイプでは感覚的なフィードバックがなく、目で見て把握することが頼りで、義手が体の一部とは感じられなくなることがある。

▲© Luca Rossini

▲© Luca Rossini

また、他の研究グループも触覚のフィードバックに成功しているが、同チームの研究は一歩進んでいる。損傷箇所に直接挿入された電極から神経内の刺激を受けることで、損なわれた感覚を残された感覚で補う「感覚代行」が起こり、位置のフィードバックと触覚のフィードバックの両方が同時に、そして即座に伝達されるのだ。

実際、高度な自己受容能力を取り戻した2人の患者では、4つの対象物の大きさと形状を75.5%という高い精度で当てることができたそうだ。End