オランダの自然保護区に完成した「‘Tij」
鳥の卵の形をしたユニークな野鳥の観察施設

北海に面したオランダのステレンダム(Stellendam)というところに、2018年11月にハーリングヴリート(Haringvliet)川の水門が完成した。水質と生物多様性を改善させるためのものだという。

こうした変化のプロセスを体験できる施設が、水門付近のScheelhoek自然保護区に建てられた。RO&AD ArchitectenRAUが手がけた「‘Tij」と呼ばれる卵型をした建築で、野鳥の観測施設として機能する。ツバメが好むビオトープやシギ類、アジサシのような鳥が楽しめるそうだ。

施設の手前は、鳥の邪魔をしないようにトンネルになっている。係船柱やかつてレンガ製造で使われていたアゾベの板を活用し、砂で覆った。トンネルの横にはツバメ用の人工の巣穴を設け、この道を抜けると観察小屋に入り、孵化をしているアジサシや水辺に生息する多様な鳥を見ることができる。



建築はサンドイッチアジサシの卵をモデルにしており、アジサシと同じように砂の上に巣をつくり、その上に卵を置いたデザインだ。その周囲には、クリの枝や葦、小さな砂丘を使い、垂直に立った数枚の「羽」をこしらえた。形状、全体的な構造、木材のサイズ、開口部のサイズなど、絶妙な比率に仕上げるためにパラメトリックな設計になっている。

年に数回は建物の下にまで水が入り込むそうだが、この下部はアコヤ(accoya)という木材を使用。上部にはマツを使い、水門の内側で収穫した地元産の葦で茅葺きにし、屋根は水位が高くなっても沈まない設計だ。屋内の床は、構造を安定させるためにCLTとコンクリートのハイブリッド構造で、そこから周囲の島々や水門、そして水辺の美しい景色が味わえる。End