多田正治アトリエが手がけた「九重の竹テント」
和歌山県熊野川町の山中に完成したテント群

多田正治アトリエが手がけた「九重の竹テント」は、和歌山県熊野川町の山中の20人ほどの集落「九重(くじゅう)」に完成したテント群だ。

6年前に東京より移住してきた若者たちが旧九重小学校で「bookcafe kuju」と「パンむぎとし」を営んでおり、主催イベント「KUJU MARKET」は5年目を迎えている。「雨でも楽しい」をコンセプトにしているが、水害の多い地域でもあり、そのコンセプトを実現するためのテントである。

主構造には竹を用いた。紀伊・熊野の主幹産業のひとつは林業で、ヒノキ・スギ林にとって竹害は大きな問題でもある。この竹の利用方法の可能性のひとつとして、竹の伐採から試作を重ね、9つのテントが連なるイベント会場をつくりあげたのだ。

テントは、不定形な四角形平面と片流れ屋根で構成。平面の裏表、屋根の勾配の向きをそれぞれ設定することで4つのバリエーションが出現する。これらを組み合わせることで、多様な平面をつくることが可能だ。

テントの勾配屋根は高い方の高さを2750mm、低い方を1430mmとすることで、斜めのラインを強調したデザインになっており、高い方の面は解放感を与えてくれる。また、テント群の中を歩くことで、屋根越しに切り取られた九重小学校や北山川の巨大な絶壁を交互に味わうことができるそうだ。End

企画
KUJU MARKET実行委員会
設計
多田正治アトリエ
施工
多田正治アトリエ+学生有志
施工協力
野地木材工業、ふじさき組
クレジット
多田正治アトリエ
多田正治 阿部彩音

学生有志(大阪大学大学院)
松本健一郎 末金優士

学生有志(近畿大学)
小田陽基 佐々木康太 桟敷航平 萩原柚香 橋本剛明 廣尾佳奈子 前田樹 増冨由梨 松浦美月 八面美晴