ヴェネツィア・リド島のホテル「Ausonia Hungaria」
Simone Micheli Architectが客室の改装を手がける

イタリア・ヴェネツィアの沖合に浮かぶ細長いリゾート地 リド島(Lido)のホテル「Ausonia Hungaria」。その客室の改装をSimone Micheli Architectを手がけた。

完璧なネオルネッサンス様式の建物で、その歴史は古く、1907年に最初のオープンを迎えた。やがて戦争の勃発や経済危機を経て、リド島やその多くの建築は観光、スポーツ、文化の中心としての役割を失ったが、現在ではリド島は観光地として再び脚光を浴びつつあるという。

そして、このホテルも内外装を改修することで、島の歴史の一部として、記憶のなかに新しさを織り交ぜながら、威光のある壮麗さを取り戻しつつ、新しい生命が吹き込まれることになった。

客室の壁にはイタリアの写真家 Maurizio Marcatoによる印象的な写真が描かれているが、これは外観のファサードを再解釈したものだそうで、細部やその特徴を強調しているという。

バスルームは休息の場所で、そこでは外の世界に惑わされることのない幸福な状態を求めることになる。また、グレーのセラミックが空間を占める一方、白い家具が感情に刺激を与え、魅力的な中心にもなっている。

バスルームと部屋のあいだに仕切りとなる構造物はなく、この空間を支配している形状や色彩が生み出すかすかな空気が仕切りとなることで、自分の時間を楽しめる閉じた空間を構築できる。

「私のデザインは、日常の時間や空間といった概念を超えて、歴史と建築の再解釈を目指しました。こうしたプロセスは、限界や境界という考えを打ち壊しながら具体化していきます。つまりそれは、内と外、過去と現在を混ぜ合わせて、日常生活とはまったく異なる雰囲気を作り出し、まだ起こっていないなにかに私たちの注意を向けることなのです」とSimone Micheliは語っている。End