MITが新しい抗生物質の開発に人工知能を活用
耐性菌に対する強力な新薬を特定

▲画像:Collins Lab at MIT 提供

私たちにとってなじみ深い抗生物質だが、過去数十年で新たに開発された抗生物質は数少ないそうだ。こうしたものも、実際には既存の医薬品にわずかに手を加えたものが多いという。新しい抗生物質の特定には、多額の費用や長い多大な時間がかかるのが実情のようだ。

一方、既存の抗生物質に対して耐性をもつバクテリアも存在するそうで、その数も増えており、状況は深刻化しているといわれる。

このような抗生物質にかかわるさまざまな問題を解決する取り組みがマサチューセッツ工科大学で行われている。AIを使ったディープラーニングによって、抗生物質が効かない耐性菌にも有効な、強力な新薬を見つけることができたそうだ。

今回、研究チームは大腸菌を殺すのに有効な分子の化学的特徴を特定するために、アメリカ食品医薬品局FDAが承認した約1,700種類の医薬品と、多様な構造や幅広い生理活性をもつ800種類の天然由来の物質、あわせて約2,500種類の分子の機械学習を実施。さらに、訓練されたモデルは、米ブロード研究所ドラッグリポジショニングハブにある約6,000種類の化合物を使ってテストを行った。

そして、モデルは、強力な抗菌活性をもつとされる、既存の抗生物質とは異なる化学構造の分子1つを発見することができた。また、別の機械学習モデルによって、この分子がヒト細胞に対して毒性が低いと考えられることもわかったという。

この新しい研究では、有力な候補となりうる他のいくつかの抗生物質も特定しており、さらに試験を重ねる予定で、バクテリアを殺すことができる医薬品の化学構造について学習したことをベースにして、このモデルから新しい医薬品を設計することも可能だとしている。End