エジプトのピラミッドを間近に望むレジデンス
Malka Architectureによる「Cheops Observatory」

エジプト・カイロ近郊に建つギザの大ピラミッドのふもとの高台には、Nazlet El Sammanという村があるそうだ。ここはこの大建築に魅せられた砂漠の民が7世紀に開いたとされる場所で、Malka Architectureの新しいプロジェクト「Cheops Observatory」も、移動に今なお馬やラクダを使うこの古い村にある。

この建築はさるアーティストのレジデンスで、砂漠の玄関口にも、歩いていける距離にあるピラミッドを望む展望台にもなる施設だという。

こうした村では大量の観光客の流入や不動産投資を防ぐことが求められるが、近年では世界中の建築の60%以上が許可なしで行われ、建築家のいない建築もあり、カイロでは違法建築が街の70%に広がっているとされる。

そこで、このプロジェクトでは、村の歴史遺産の保護や保存、さらには拡張を目指して、違法建築を阻むようなアプローチを採用。地元の建設技術、古くから伝わる知恵や工芸を活用し、アップサイクルや転用、再利用した資材を用いた。

ファサードは土のレンガを積み上げ、村から出た古い窓やシャッターをリサイクル。ギザ砂漠に住んでいた先祖が手作りした三角形のテントを屋根の一部に取り入れた。

太陽と月の軌道を最大限に考えて、展望台はピラミッドと向かいあうように作り、建物は東西方向とした。また、ピラミッドに面した瞑想スペース「Time Room」も設置。テキスタイルを張った屋根は、季節に応じてすばやく開閉が可能だ。

Cheops Observatoryは、開きながらも閉じた建築で、遊牧民も定住者も使えるつくりとなっている。建築の基本にたち戻り、その土地固有の建築とレディメイドの建築の対話を促し、21世紀のエコロジーを考える上で重要な、違法建築の問題に答えとなる建築を目指したそうだ。End