スイス政府がコロナ感染に関するインフォグラフィックを完全統一

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウィルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍においてすでに行動を起こしているクリエイティブな活動をリサーチすることで、未来を考えるヒントを探ろうとしています。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介しています。

今日のトピック

スイス政府は、コロナウイルスに関するインフォグラフィックを国が指定したものに完全統一しました。遠くからでも目を引く色を基調としたシンプルで厳格なグラフィックで、ソーシャル・ディスタンシングへの配慮や咳をするときのエチケットについての注意点が説明されており、駅やスーパーなど街のいたるところにこのグラフィックが使われています。

SPREADはこう見る

「スイスではインフォグラフィックを完全統一」。スイスの知人から入ったこの一報に正直驚きました。これを手がけたのはチューリッヒのエージェンシーRod Kommunikation。スイスのグラフィックといえば、情報整理とタイポグラフィーの美しさが頭に浮かびますが、これはその印象とは異なり速度・認知・更新、すべての面で機能することのみを徹底的に突き詰めているように思えます。

内容は、自宅滞在・社会的距離・手洗い・握手を避ける・咳対処・医者へ行く前に電話、の6つのピクトグラム。スイスデザインの特徴は、縦横のガイドラインをベースに構成要素を配置していくグリッドシステムですが、これはグリッドを用いず、同じ線幅のみにして統一性を持たせています。

状況に合わせて適宜行われた更新も見どころです。2020年2月末に公開された最初バージョンは、地色が「注意」を表す黄色でピクトグラムは3つでした。その後、対策が強化された3月5日には、地色が「停止」を表す赤に変更され、ピクトグラムは6つに増えました。黄色が赤になることで、状況の変化を的確に伝えます。4月29日以降は、ピンクになりましたが、これは4月27日の規制緩和を受けての対応だと思われます。また、ピクトグラム自体も必要に応じて適宜細かい更新が行われています。

スーパーマーケットで使うためのサイン展開、SNSと印刷物を用いた周知、メディアに応じて自由に組み合わせができるモジュールを活用した他媒体での拡散、プロジェクトがスタートした10日後にはスイス全土にポスターが掲出されたスピード感、これらすべてが複合的に機能したことによって95%以上の人口が認知する結果につながりました。

書体Akzidenz Groteskを用いたチューリッヒ空港のサインデザインやスイス連邦鉄道の時刻表、これらは機能性と美しさを見事に兼ね備えています。4つの公用語をいかに機能的に見せるか?を実践してきたことが、スイスのグラフィックデザインの礎になったと言われています。国全体での正しい情報整理がなければ実現しなかった「インフォグラフィックの完全統一」。そのレベルの高さが伺えます。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。

スイス政府連邦保健局 Federal Office of Public Health