ロックダウン解除後の自動車利用を
減らそう。ミラノ市が
歩行者と自転車の道路を拡張

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウィルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

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今日のトピック

イタリア各地の都市封鎖によりミラノの交通渋滞は、これまでの30~75%に減少し、それに伴って大気汚染も改善されました。この状態を維持しようと、ミラノ市は市内35kmに及ぶ車道の路幅を縮小し、空いたスペースをサイクリングやウォーキングのために割り当てる計画を発表しました。

SPREADはこう見る

世界各国のロックダウンによる影響は、経済活動を停滞させるなどその多くがネガティブなものですが、そこから得られたポジティブな側面に着眼し、パンデミック収束後も継続させようという考え方はたくましく映ります。今回の施策では、市民の移動手段をクルマや公共交通機関から、自転車や徒歩に変えてもらうことが狙い。5月にはミラノ市北東部の主要な道路であるブエノス・アイレス通りを、制限速度30km/hの自動車道と、歩行者や自転車のための優先道路に分ける工事に着工し、夏には完成予定といいます。

環境に配慮した自転車利用という点では、東京でもシェア自転車がだいぶ定着してきました。ミラノでは2008年からBikeMiという自転車のシェアリングサービスがスタートしましたが、2012年に私たちが初めて現地でその自転車を見たとき「どんな人が使うのかな? どうやって借りるのだろう?」とイメージがわかず、シェア自転車が、まだまだ遠い存在だった記憶があります。

その後、2015年のミラノ万博開幕にあわせ市内には全長190kmのサイクリングロードが完成しました。そういった環境整備の後押しもあり、BikeMiはあっという間に定着、今では私たちが毎年出展しているミラノサローネ(ミラノ国際家具見本市)期間中、この自転車で点在する会場をスピーディーに移動するジャーナリストらをよく見かけるようになりました。

今回の対応により、サイクリングロードの利便性や価値は、今後さらに再評価されるのではないでしょうか。ミラノ市北西部にあるViale Duilioといった一部の通りでは、すでに自転車レーンの工事が完了している地域もあるようです。

Viale Duilio - CityLife (1)

▲Viale Duilioの様子

数年前、BikeMiを初めて借りた際、現地の友人から「慣れないとトラムの線路の溝に自転車の車輪がはまることがあるから、注意してね」と、こともなげに言われました。実際にトラムの溝にはまって苦労している人を目にしたこともあります。サイクリングロードが整備されれば、この心配も減り、安全に移動ができるようになります。

今年は、コロナの影響から、ミラノサローネが中止となりました。家具やデザイン業界にとって、注目度の高い大きなプレゼンテーションの場であり、私たちにとっても、大切な発表の機会になっています。また来年、自転車でミラノ市内を気持ちよく駆け抜け、現地の友人らと語り合えることを心より願っています。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。