香りが与えてくれる時間

長く続いたおうち時間は少しずつ以前の日常を取り戻してきましたが、まもなく梅雨のじめじめする季節がやってきます。普段、あなたはどのように気分転換していますか? 音楽を聴いたり、運動をしたりと好きなことでリフレッシュする方法があるなか、香りを上手に取り入れている方も多いかと思います。香りは五感の中で唯一、本能や感情を司る部分に直接働きかけるため、印象や感情のコントロールに役立つと言われています。

日常空間において気分をコントロールすることができる手軽なアイテムは、柔軟剤やルームフレグランスなど数多くあります。香りを選ぶときは、パッケージに対しての視覚、香り表記を音にしたときの聴覚、といった嗅覚以外のセンサーを使ってイメージを膨らませながら好みを探していると思います。決まった形を持たない香りと色には、五感によるイメージ表現のプロセスに共通点が多いと感じています。

そこで今回は身近な香りのイメージがネーミングとパッケージカラーでどのように表現されているかに着目しました。下のマップは国内メーカーの柔軟剤の香りのネーミングとパッケージカラーを整理したものです。

花や果実といった優しくやわらかな香りのパッケージカラーは、ピンクやオレンジの暖色系パステル系が定番です。ここ最近は防臭・抗菌といった機能の充実に伴い、清潔感や清涼感を表現するため、グリーンやブルーの寒色系が多く使われています。また、最近はあえて無香料というものもあり、無垢でクリーンな印象を表現するため白が多く使われています。このように、パッケージカラーで香りの雰囲気は何となく想像できるように思います。そんななか「イノセント」「マリアージュ」など、具体的な物体が提示されず、いったいどんな香りなの?というワクワクさせられるネーミングも多くあることに気づきました。

先日、清らかな空気を包み込むような通り雨を想起させる「レイン」というホームフレグランスを見つけました。

▲ホームフレグランス「クリーンスペース レイン」(ブルーベル・ジャパン)

このシリーズは「人生のシンプルながらも完璧な瞬間」を香りコンセプトとしており、幸せな時間の一瞬を切り取ったかのような情景を彷彿とさせるネーミングとなっています。実際「レイン」の香りは、亜熱帯の自然の中、朝靄を見ながら体験したヨガを思い出させ、ゆったりと気持ちが浄化されるような気分にさせてくれました。また、香水成分だけでなく、パッケージやボトルにもリサイクル可能な天然素材が使用されており、環境に優しいアイテムであることも気持ちが満たされる要因のひとつです。香りを楽しむだけでなく、物を選ぶプロセスからも満足度は上がっていくのではないでしょうか。

使う人が満たされた気持ちで過ごす時間や体験。それらにつながるデザインにおいては、香りや色・素材がとても素敵な役割を担っていると改めて実感しました。不安やストレスがたまりがちな今だからこそ、私たちも、人の気持ちにプラスを与えるカラーデザインを目指していきたいと思います。