指先の触覚が、非接触の世界を拡張
する。デザイナーRYO TADAが
デバイス「FULU」を提案

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

東京とロンドンを拠点とするデザイナー、RYO TADAは、指の爪にはめて触覚を拡張するデバイス「FULU」を提案しました。

SPREADはこう見る

現在、デジタル技術を用いた体験は、視覚に重点が置かれています。このデバイスは、他者との共感を生む触覚をプラスできないか、と開発されたようです。

「FULU」は、小さく軽量で、Bluetoothに接続すると、遠くにいる人と触覚を共有することができます。相手が触ったものの質感や、撫でたのか軽く叩いたのかも感じることができるそうです。素朴な疑問として質感をどのように知覚するのかが気になります。感触を認識するのは脳なので、爪への何かしらの刺激が指の腹に働きかけて脳に伝わるのか。実際に体験してみたいところです。

当初の狙いとは違うかもしれませんが、あらゆるものとの接触が制限されるアフターコロナの状況で「FULU」は役立つのではないかと気づきました。スマートフォンだけではなく、エレベーター、インターホン、自動ドア、呼び出しベルなど、触らないと反応しなかったスイッチと連動できれば、感染リスクを抑えながら、今までと変わりない環境で生活できるかもしれません。

また、RYO TADAによると、人々は触れ合うだけで怒り・恐怖・嫌悪感・愛情・感謝・共感の6つの感情を伝えられるそうです。触れ合うことができない状況は気づかぬうちにストレスを感じる原因になっているかもしれません。このデバイスが進化すれば、ストレスの軽減だけでなく、生活に新しい体験が生まれるでしょう。実生活では使用する前は半信半疑だったものが、のちに生活に必要な存在になっているものがあります(個人的には食洗機がそうです)。このデバイスがそのような存在になってくれることを望んでいます。End

参考記事

RYO TADA
デザイナー。東京とロンドンを拠点に主にエンジニアリングと建築の領域で活動する。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。