NEWS | グラフィック / サイエンス
2020.06.24 15:30
2つの同じ灰色のドットがあり、その背景をそれぞれ明るいものと暗いものにしたとする。すると、このドットは同じ色であるはずなのに、まったく違う色に見えてしまう現象が発生する。
こうした同時対比における明度の違いは、昔からよく知られた錯覚で、100年以上も前からこのメカニズムを解明しようと研究されてきたそうだ。
そこで、米マサチューセッツ工科大学が主導する研究チームは、この現象について、視覚情報が脳の視覚野に到達する前におそらく網膜内で生じる「明度の評価」に基づいていることを発表した。
研究の一環として、研究者たちはインドの目の見えない子どもたちを分析し、手術後に目が見えはじめた直後に彼らがこの錯覚に陥りやすいことを発見。こうした明るさの評価が、それまでの視覚経験を必要とせずに、単純な神経回路によって生じる可能性が高いことをつきとめた。
たとえば、顔やオブジェクトの識別といった視覚の働きの多くは、以前に見た経験や、見ているものに対する予想など、高度な理解に依存しているとされる。しかし、今回の明るさの評価では、照明の具合や形状、影といった高度な情報の処理は必要でないことになる。
さらに、今回の実験では、上下に置かれた2つの立体を用意。その側面は光が当たっているように、一方が明るく、もう一方が暗くなっており、それぞれの端に同じ色のドットが施されている。一般的には上の立体のように、明るい面にあるドットは暗い面のドットよりも黒っぽく見えるのである。
しかし、下の立体のように、影にある面のドットのほうが光を受けている面にあるドットよりも黒く見える、という通常とは反対の現象も生じることがあるのだ。
画像を見るとき、私たちの脳は画像の各部分の明るさを知覚している。しかし、こうした明るさの知覚は、実際には画像上の光量によらない場合もあり、オブジェクトの色とこれを照らす光量を掛け合わせたものだということになるという。そして、私たちは2つの目から得た情報を統合するまでもなく、すぐに明るさの評価を行うことができるのだそうだ。