外出自粛中に空間デザイナーが粘土で
つくる理想の部屋。コンペも実施
「Clay Play contest」

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

米のデザイナー、エニー・リー・パーカーさん(Eny Lee Parker)は、外出自粛中に自分が考える理想の部屋のミニチュアを粘土でつくり、3月29日、Instagramにアップしました。さらに理想の部屋をテーマにしたコンペティション「Clay Play contest」を立ち上げ、周囲に参加を呼びかけたところ建築家、デザイナーなどから46件の応募があり、9人のファイナリストが選ばれました。

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パーカーさんは空間デザイナーで、普段から部分的に粘土(セラミック)を用いた家具や照明を制作していました。だからこそ、粘土を使った自宅待機の過ごし方を思いついたのでしょう。彼女のインスタグラムには理想的な部屋に加え、ニューヨーク デザイン ウィークに出品予定だった自身の作品のミニチュアも投稿されています。

「Clay Play contest」のファイナリストの作品を見ていると、いろいろな人の自宅に遊びに行った時のようなワクワク感があります。どれも個性的で、楽しみながらつくったことが伝わってきます。参加者の多くは、パーカーさんと同じようにインテリアデザインや空間デザインを専門とする人が多いことも特徴です。粘土ならではの丸みのある可愛らしいフォルムでありながらリアリティを感じる表現力は、専門性があってこそなのでしょう。

ファイナリストのひとり、ジュリー・デュマ・ローズさんは、広々とした別荘のようなリビングを制作しました。傾斜した天井と暖炉。窓際のステップダウンフロアにはたくさんのクッションが置かれ、丸い窓から外を眺めるひとときは、リラックスできそうです。ローズさんの職能であるインテリアデザインやスタイリングの経験が生かされているようです。

レイチェル・トムソンさんの作品は、部屋中に置かれた観葉植物が特徴です。トムソンさんは植物のコレクターをしていて、インスタグラムにはたくさんの植物が投稿されています。この観葉植物の精巧なつくりは彼女の豊富な植物の知識と、ポリマークレイ(樹脂が入ったオーブンで加熱すると固まる粘土)を使った細かい加工によって実現されています。

このコンペティションが開催された時期は、今よりも外出制限が厳しい状況でした。家の中にいる時間が長いからこそ、それぞれの「理想の家」を考える楽しい時間に没頭できたのでしょう。コツコツと小さなものをつくっているにも関わらず、そのサイズとは逆に想像が広がるのびのびとした気持ち良さがあります。

現在も、安全を考えると可能な限り家にいるべきでしょう。想像を膨らませて、最高の部屋を粘土でつくることにトライしてみるのもよいかもしれません。End

Eny Lee Parker
ジョージア州サバンナを拠点とする空間デザイナー。主にセラミックを素材にしたオブジェクト、家具、照明を手がけている。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。