指からの感染リスクを減らすために。
ロンドンのデザイナーが身体のどこ
を使っても信号機のボタンを押せる
装置「PUSH」を提案

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

ロンドンを拠点とするプロダクトデザイナー、トール・ター・クルブさん(thor ter kulve)は、コロナウイルスの指からの感染を防ぐために、身体のどの部位を使っても信号機のボタンを押すことができる装置「PUSH」を提案しました。

SPREADはこう見る

初めてクルブさんのインスタグラムで、自身が膝でボタンを押している写真を見たとき、指からの感染は防げるけれど膝でしか押せないならバリアフリーではないのでは?と感じました。そもそも「ボタンは指で押すもの」という先入観もあったのかもしれませんが、下向きに傾いていて形も縦長のため、他の部位で押すイメージがわかなかったからです。しかし考えてみれば、現行の小さなボタンより触れる面積が広くなるので、膝や肘、腰など身体のどこを使っても問題ありません。杖などでも押すことができるのでバリアフリー性は向上すると言えそうです。

また、すでにある信号機のボタンの上に後付けできる点が優秀です。クルブさんは、自宅待機が求められる期間中に、自身のデザインスタジオ内にある道具と材料だけでこの装置を制作しました。そのためもあってか「PUSH」の形と仕組みはとてもシンプル。黄色のバーツ以外は既製品で代用できそうです。イギリスの信号機用に設計されましたが、他の国の信号機にも装着できるよう調節可能とのことです。

きっかけは、指からのコロナウイルス感染リスクを軽減するためでしたが、結果的に使い方の選択肢を大きく広げているところが素晴らしいと思います。ボタンを押す部位をなぜ指に限定していたのだろうか?と気づかされました。このような灯台下暗し的な発見は、他にもまだあるかもしれません。End

thor ter kulve
ロンドンを拠点とするオランダ人デザイナー。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。