米国在住の小説家が描くマスクだらけの街
コロナ禍のニュースを題材にした短編小説
「Indivisible City」を公開

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

米国在住の小説家、ダニエル・トーデイさん(Daniel Torday)が、マスクをつけた人々であふれる街を描いた短編小説「Indivisible City」を3月に公開しました。ニュースを題材にした短編小説を投稿するサイト「The Chronicles of Now 」で読むことができます。

SPREADはこう見る

「Indivisible City」は、3月初旬、コロナウイルス流行直後のニュース記事を元に制作されました。マスクを買い占める人々や感染した際の対処法、パンデミック中の心理的ストレスの負担、医療従事者にマスクが行き渡らない状況などから着想を得ています。

小説は、伝染病が広まったという噂から、ある男がマスクを買いだめるところから始まります。男は金持ちだったため、値段が高騰するマスクを次々に買い占め毎日マスクをつけて外出します。その姿を見た人々がマスクをつけなければいけないと思い込み、その強迫観念はウイルスのように街中の人々に伝染します。マスクだらけになった街の路上には、夜になると使用済みの青や白のマスクがたくさん捨てられました。愛や安心を求める人々は、地下鉄や車、路上でマスクに覆われた人の目を覗き込もうとする、という内容です。

小説が公開された3月当時、マスクの買い占めは社会問題になっていたため、フィクションとはいうものの、いま読むより現実味があったかもしれません。

この小説は実際のニュース記事が元になっているだけあって、読んでいる最中、フィクションかノンフィクションなのかよく分からない感覚になりました。ただ小説では伝染病の噂が広まるだけで、実際に人が亡くなるシーンはありません。その点だけは、現実だったらいいのにと思いました。

そして何より、小説のようなことがいまも起こっているという現実を、冷静に受け止めなければなりません。End

Daniel Torday
米国在住の小説家・エッセイスト。代表作『ポクスル・ウェスト最後の飛行』は、「ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー」エディターズ・チョイスに選ばれ、国際ダブリン文学賞にノミネートされる。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。