パリのレストランが大きなテディベア
を使って社会的距離を確保しつつ
和める空間を創出

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

パリのレストラン Le Choupinet が、ソーシャル・ディスタンシングを守るため、テラス席に巨大なテディベアを座らせています。

SPREADはこう見る

Le Choupinet では、コロナウイルス流行前からテディベアを店内に置いて、店のマスコットとして親しまれていましたが、コロナ禍でも利用者に安心して過ごしてもらうために活用されています。同店のInstagramには、一緒に乾杯する女性の写真などが投稿されており、この状況に一役買っているようです。

日本でも、静岡県の伊豆シャボテン動物公園でぬいぐるみを使ったコロナ感染対策が行われています。園内のレストランでは、カピバラのぬいぐるみがテーブル席に置かれています。こちらも2018年のオープン当時からありましたが、現在は感染対策のため社会的距離を守りながらぬいぐるみと「相席」をして食事を楽しめます。

近頃レストランに食事に行っても、席をひとつあけるよう注意書きが貼られていると「座ってはいけない」という否定的な印象を受けます。友人と久しぶりに食事をすることになっても距離を取らなければならないのは寂しいものです。そこにぬいぐるみが置かれるだけで、気分が和み空間が変わります。

しかし、Le Choupinetのクマは可愛いだけではありません。 その大胆な大きさもポイントです。この存在感が何の抵抗もなく距離をあける助けになっています。一目見ただけで置かれた意図がわかり、その愛嬌でお客さんを不機嫌にせず、会話のネタにもなり喜ばれるでしょう。

元々あったクマのぬいぐるみをどこに置くか。そのアイデアひとつで社会的距離を無理なく保てる空間に変えています。クリエイティブの基本である、過剰なものづくりだけではなく既存のものをうまく利用して大きな効果を得る、機転を利かせたデザインと言えそうです。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。