イスラエルの建築事務所 gitai archtectsが
自然との対話の時間をつくる建造物
「landroom」を砂漠に建設

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

LANDROOM – Techelet by Ben Gitai from Ben Gitai on Vimeo.

今日のトピック

イスラエルの建築事務所 gitai archtectsは、コロナウィルスによってもたらされた予測不可能な生活様式への移行を見つめ直すための小さな建造物「landroom」をイスラエル南部のネゲブ砂漠に建設しました。そこは、ラモン・クレーターの観測ポイントであり、夜は星の観測所でもあります。

SPREADはこう見る

「landroom」は、人が密集している都市から離れ、より自然に近い生き方を模索する提案だと感じます。

ネゲブ砂漠には、地殻変動で生まれた、世界でも有数の巨大な窪地「ラモン・クレーター」があります。「landroom」は、ラモン・クレーターから採取された土砂や石を型に流し込み、少しずつ積層することで成形されています。6㎡のキューブの中心が円筒形にくり抜かれたような構造で、2つの小さな窓には同じく現地の砂でつくられたウィンドウチャイムが付いています。「landroom」は、日中の強い日差しからの避難所としても機能します。

「landroom」から視界に入るのは、地平線の果てまで凸凹の土地が続くクレーターと砂漠だけ。肌に感じる風と、日向と日陰の温度差。ボーボーと吹き付ける風の音に混じってウィンドウチャイムが奏でる音色が聞こえてくるようです。小屋とも椅子ともつかないシンプルで不思議な構造物は、大地から生まれ、いつかまた土に還る。なんともポエティックなプロジェクトです。自分も自然の一部であると感じると同時に、人がつくりあげてきた社会を客観的に見つめ直すための空間。いつか行ってみたいジェームズ・タレルの作品「ローデンクレーター」を思い出します。

設計者であるgitai archtectsの仕事は、建築を越えて現代社会に問いを提示しているようです。コロナウイルスの実用的な対策とは真逆かもしれませんが、このような問いは一方で発信し続けられるべきこと。強く支持したいプロジェクトです。行ってみたい!End

gitai archtects
イスラエルの都市ハイファとパリに拠点を置く建築事務所。主に紛争地域の住宅とオフィスの都市開発に取り組んでいます。2014年12月設立。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。