クリスタル宮殿を巨大な鳥の巣に見立てる
アーティストPetrit Halilajによるインスタレーション

スペイン・マドリードのソフィア王妃芸術センターは、レティーロ公園内のクリスタル宮殿(Palacio De Cristal)にて、コソボのアーティスト Petrit Halilajによるインスタレーション「To a raven and hurricanes that from unknown places bring back smells of humans in love」を2021年2月28日(日)まで公開している。

同展においてHalilajは、クリスタル宮殿を屋外から続く巨大な鳥の巣に見立て、窓を開け放ち構造物を設置して、公園に生息したり移動してきた鳥や生きものの餌場にすることで、訪れた人を周囲の世界と結びつけることを目指している。

鳥は彼の作品には欠かせないもので、現代的な考え方によって構築された自分と他者、文化と自然のあいだの境界を飛び越える存在である。とりわけ彼は、「バウワー」と呼ばれる丹念な構造物を作り、メスを惹きつけるためにカラフルな装飾を施すニワシドリの求愛行動にヒントを得ているそうだ。

鉄骨を慎重に築き、ペイントしたカンヴァスでできた巣を飾る大きな花は、彼のパートナーであるアーティスト Álvaro Urbanoとの共同作業によるものだという。ただ、それだけではなく、彼らの親密さを示すことで、社会的な側面や政治的な側面をも表現しているそうだ。

たとえば、「History of a Hug」(2020)における木の棒をもった白いカラスは、こうした約束事を物語っている。

これはとくにHalilajの家族の歴史では特別なもので、彼の祖父が田舎で働いているときに使っていた道具であり、祖母が初めての子を産んだときに手にしていたものでもある。家父長制の社会では、人前で大きな喜びを表現すれば弱さの表れとみなされる。これを壊そうとして棒を強く抱きしめているのだ。

また、白いカラスのモチーフは、多様性と、承認への変化に対する抵抗を示唆している。彼の家族やコソボ社会の大多数が十分に認めていない同性愛者や、他の多くの国々、なかでもスペインが認識していない国・コソボの人であることなど、多くのこと象徴している。End