2021年度プリツカー賞の受賞者
アンヌ・ラカトン&ジャン=フィリップ・バッサルに決定

▲アンヌ・ラカトンとジャン=フィリップ・バッサル、写真提供:Laurent Chalet

建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞の2021年度の受賞者は、建築設計事務所 Lacaton & Vassalを主宰するフランスの建築家 アンヌ・ラカトン(Anne Lacaton)とジャン=フィリップ・バッサル(Jean-Philippe Vassal)に決定した。

私邸や公営住宅、文化・学術機関、公共スペース、都市開発などの設計を通じて、既存の建築を尊重しながらサステナビリティの可能性を追求してきた両氏。

▲FRAC Nord-Pas de Calais、写真提供: Philippe Ruault

審査員の一人は、「彼らはモダニズムの遺産を新たにする建築アプローチを確立しただけでなく、建築という職業の新たな定義も提案しました。現代の差し迫った気候や環境の問題、とくに集合住宅の社会問題に対処する彼らの仕事を通じて、人々の暮らしをより良くするというモダニストの希望と夢は、再び活気を取り戻しています」と、その功績を評価している。

たとえば、「Latapie House」(1993)などのように、冬園やバルコニーを活用して、居住者がどの季節でもエネルギーを節約しながら自然にアクセスできる、手頃な予算での居住空間の拡張を実現。

▲Latapie House 1993、写真提供: Philippe Ruault

▲Latapie House 1993、写真提供: Philippe Ruault

さらに、1960年代初頭に建てられた17階建て・96ユニットの集合住宅「La Tour Bois le Prêtre」の大規模な改装(2011)では、コンクリートのファサードを取り払って各ユニット内部のスペースを増やし、エコロジカルなバルコニーを作り上げた。

また、パレ・ド・トーキョーの改修(2012)では、未使用であったり非効率な部屋のバランスを取り直して、大規模な活動や変化するニーズに対応するオープンスペースを作り、建築をより長く使えるようにしている。

▲École Nationale Supérieure d’Architecture de Nantes、写真提供: Philippe Ruault

▲École Nationale Supérieure d’Architecture de Nantes、写真提供: Philippe Ruault

そのほか、ナント国立建築学校(2009)では、3階建ての建物にさまざまなサイズのスペースを設け、そのいずれも使用目的を限定せず、柔軟な使い方ができるものとした。

▲Site for Contemporary Creation, Phase 2, Palais de Tokyo、写真提供: Philippe Ruault

▲Site for Contemporary Creation, Phase 2, Palais de Tokyo、写真提供: Philippe Ruault

ラカトンによれば、「優れた建築とは開かれたものです。それは私たちの暮らしに対して開かれており、また、誰もが使いたいように使えるという自由にも開かれているのです」。そして、「表現的なものや人目を引くようなものである必要はなく、建築のなかで展開される暮らしを穏やかにサポートできる、よくなじんで使いやすく、きれいなものでなければなりません」と語っている。End