東京とモスクワを拠点にする建築家ユニットKASA / Kovaleva and Sato Architectsが
ヴェネツィア・ビエンナーレ会場のロシア館を改修

▲ファサード©KASA

ヴェネツィア・ビエンナーレの会場となる同市の公園ジャルディーニには、さまざまな国のパビリオンが建てられている。

そのうちのひとつであるロシア館は、同国の建築家 アレクセイ・シューセフ(1873-1949)が設計したもので、1914年の開館以来、1世紀以上にわたってヴェネツィア・ビエンナーレにおけるロシアの文化拠点を担ってきた。

このロシア館では改修プロジェクトが進められている。シューセフの建築がもっていたもともとの精神性を取り戻しながら、現代的な要件とさまざまな構造上の問題にも対処することがねらいだという。

今回のプロジェクトでは、2019年12月に同館の改修に向けたコンペが開催され、東京とモスクワを拠点にするAleksandra Kovalevaと佐藤敬の建築家ユニット KASA / Kovaleva and Sato Architectsが選ばれた。

オリジナルの建築は、展示空間とその周辺の「多孔性」に特徴があり、ヴェネツィアのラグーンを見下ろすテラスやジャルディーニのメインストリート沿いの豪華な階段、周囲の自然に面した複数の開口部を備えていた。

しかし、時代とともにさまざまな変更が加えられ、窓と出入口のほとんどは完全に塞がれているという。KASAの提案は、パビリオンが重ねてきた「歴史の層」に着目。シューセフが当初意図していたように、窓を開放し、建物と周囲の関係性を再構築。ラグーンを見下ろすテラスにつながるドアも再び開け放たれることになった。また、ファサードの色は、外壁の層を調査して、オリジナルのグリーンを再現している。

スロープや階段が建物内に新設され、ジャルディーニに通じる3つの外壁のドアが再び開けられることで、建物のアクセシビリティと循環性が改善。多様な展示計画が可能となり、結果としてビエンナーレおよびCOVID-19プロトコルの要求にも対応する形となった。

改修工事は2020年12月に始まり、今回で17回目を迎える2021年5月開催のヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の開幕を目指している。プロジェクトを物語として表現したKASAのドローイングと共に改修後の空っぽのパビリオン自体が展示物となる。End

▲Russian Pavilion (1914), archive image © Private collection Частная коллекция

▲エントランス©KASA

▲Russian Pavilion in 2018, Photo by Vasiliy Bulanov Courtesy Moskomarchitektura

▲塞がれている現状の窓©KASA

▲周辺環境との関係性が再構築される©KASA

▲1Fの中央の部屋©KASA

▲床を取り外すとGFとつながる©KASA

▲GFの中央の部屋©KASA

▲使われていなかったテラス下の空間の再生©KASA

▲着脱床と新しい階段©KASA

▲吹き抜けを活かした展示風景©KASA

▲回遊性の高いおおらかな空間©KASA

▲コンセプト©KASA

▲コンセプト©KASA

▲改修工事©Marco Cappelletti

▲改修工事©Marco Cappelletti