宇宙滞在が子の遺伝子発現に影響する!?
理研が「宇宙マウス」を使って研究結果を発表

▲写真提供:NASA

理化学研究所 開拓研究本部眞貝細胞記憶研究室の吉田圭介協力研究員(研究当時)、石井俊輔研究員らの共同研究グループは、マウスの宇宙ステーションでの滞在経験が、生殖細胞のエピゲノム変化および小分子RNAの発現変化を誘導し、子供の肝臓での遺伝子発現に影響することを明らかにした。

▲研究結果の概要

同グループは今回、雄マウスを国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」において、微小重力および人工重力(1g前後)で35日間飼育し、同一条件の地上で飼育した雄マウスと比較。その結果、微小・人工重力の環境下で宇宙に滞在したマウスの精巣生殖細胞では、「転写因子ATF7」と呼ばれるものが活性化したという。

また、精子細胞に含まれる「小分子RNA」を調べたところ、この「宇宙マウス」では、11個のマイクロRNAの発現変化が見られ、これらマイクロRNAの標的には、多能性に関係する遺伝子など、受精卵で重要な機能を持つ遺伝子が多く含まれていたそうだ。

さらに、「宇宙マウス」の精子から「子供マウス」を誕生させると、生まれたマウスはすべて健康で、地上で飼育したマウスの子供と比較して出生率や体重に大きな違いはなかったが、この「子供マウス」の肝臓では、19個の遺伝子の発現が上昇し、5個の遺伝子の発現が低下したことがわかったそうだ。

▲地上または宇宙空間で飼育された父親から生まれた子供マウスの肝臓の遺伝子発現

以上のことから、少なくともマウスでは、父親の宇宙空間での滞在経験が子供の組織の遺伝子発現に影響し得ることが判明。今回の研究結果は、モデル動物を用いた宇宙旅行の影響の評価など、今後の実験に役立つと期待されている。

くわえて、宇宙への打ち上げによる過重力や宇宙滞在時の宇宙線の影響、これらに伴う精神的負荷などの要因を制御することで、より安全で健康的な宇宙旅行が可能になるのではないかとしている。End