秋を彩る日本の器。7回目の「日本の道具」展が開催中です
【後編:新潟、栃木、奈良などからのつくり手たち】

9月9日より始まりました、リビング・モティーフでの「日本の道具」展も残すところ、あとわずかとなりました。

前編に続き、出品していただいたつくり手をご紹介いたします。




素竹庵 佐川岳彦 (栃木・竹籠)

sochikuan.main.jp

栃木県大田原で竹工芸作家として活動する佐川岳彦さん。お父様と岳彦さんお二人で、素竹庵という屋号の下、活動されています。佐川さんの特徴は美しい竹ヒゴ。そして、美しい造形。存在感があります。

大学では建築を学ばれていたということも関係があるのかもしれません。竹の作家の多くは大分県の竹訓練校で学びますが、佐川さんは伝統工芸の道を歩まれるお父様に教わり、クラフトのつくり手であられたお母様の影響も受けているとのこと。

「父からは発想やつくり方など、すべてにおいて、『自由にやるように』と言われた」そうですが、ひとを“はっ”とさせる美しさがあります。コロナ前には海外のワークショップに参加されていたことも、制作の幅広さに関わっているようです。




杉田明彦(金沢・漆器)

www.sugitaakihiko.com

石川県金沢市で漆芸家として活躍される杉田さんに、今回は、折敷や皿など、面のあるものを出品いただきました。杉田さんの独特の質感に、会場で、ふっと吸い込まれるように立ち止まられる方が多くいらっしいます。

常設でお取引されているのが、工芸ギャラリーだけでなく、美術系のギャラリーや、古道具店・古美術店なども多いとか。古いものにも負けない、そして相性の良い、素晴らしい作品です。




NEW TRADITIONAL (奈良・燭台、ロウソク)

newtraditional.jp

エレガントな燭台は、春日大社の境内の古損木(立ち枯れの木)や風倒木から製作されたものです。企画したのは、奈良県香芝市の障害者福祉施設「Good Job! センター香芝」。

奈良のギャラリー空櫁のオーナー五位あすかさんに相談したところ「神域で育った杉の魅力を感じてもらう」ために燭台を提案されました。空櫁さんが懇意にされている轆轤師の協力で形づくり、施設のメンバーがオイル仕上げと、酢鉄染めという仕上げをしています。

木の割れも当然ありますが、割れを防ぐ真鍮の鎹(かすがい)は造詣のひとつとなっています。1本にひとつ付いている蜜蝋の蝋燭も、県内の養蜂農家からいただいた蜜蝋を使い、灯芯は綿花を栽培している、奈良県大淀町の福祉施設「吉野学園」の綿を使用。伝統的な和蝋燭の手法によるオリジナル品です。

▲蜜蝋蝋燭は単品でも販売しています。




中山木工(沖縄・漆器)

instagram: @nakayama_mokkou

先日のインスタライブに参加していただいた、渡慶次(とけし)弘幸さんの工房です。渡慶次さんは「木漆工とけし」という屋号で、奥様と漆器工房を営まれています。一方で、漆には向かない木などを活用して、できれば地元の産業にしたいと始められたのが「中山木工」です。

出品いただいたのは、カッティングボードと箸。どれも沖縄の木です。会期前半にあっという間になくなってしまったカッティングボードですが、ラストの週末に間に合うように追加で製作してくださっているとか。無事に間に合いますように!

渡慶次さんからの木に対する愛情は、手紙に添えられたメモからも伝わります。

▲さまざまな木々の表情が楽しい。




山本忠正(三重・陶器)

三重県の伊賀から片道5時間かけて、納品にきてくださいました。好評につき、最初の納品は次々に嫁に行き、現在、追加でお送りいただいた鍋が並んでいます。

山本さんの土鍋でお料理をつくると、ご飯も料理も、なんでもおいしくなる気がします。地元、伊賀の土鍋土のコトコト、という火のめぐりが良いようです。これからの季節だけでなく、一年中使い続けることができる鍋です。


▲土鍋だけでなく、陶器のおひつ「めしびつころりん 」もきています。




富貴堂(新潟・銅器)

fuukidou.co.jp

新潟・燕の富貴堂さん。2019年は鍋を出品いただきましたが、今回は、酒器とコーヒードリップポットなどを出品いただいています。

▲金色と生地色の2色展開です。




平岡正弘(岩手・漆器)

instagram: @hiraoka5223

岩手県八幡平市で製作する平岡さんの拭き漆のカトラリー。口を入れる部分がスプーンもフォークも絶品です。「1本しか買わなかったら、家族で、奪い合っている」という方もいらっしゃいます。

▲カトラリー だけでなく、とっても使いやすい、桜のターナーも来ています。




クラフト・ユー(新潟・硝子)

www.craft-u.com
instagram: @craft__u

本年のリーフレットで注目されたガラススポットは、新潟・柏崎の工房、クラフト・ユーさんのものです。ガラスのポットは、茶葉の動きや、お茶の色が見えるのが本当に楽しいです。

新作の真鍮の取手のポット以外のものは、電子レンジにも入れられます(コンロの直火は不可です)。

▲紅茶用、ハーブ用などいろいろあります。




一景舎

謎のつくり手、一景舎さん。今年もくるみの美しい籠が届いています。今年は手提げも登場。後半になって、新作も到着しました。

▲ジーパンにも着物にも合うのが不思議です。

日本の道具 器を愉しむ、秋のしつらえ

会期
2021年9月9日(木)〜10月12日(火)
会場
東京・六本木 リビング・モティーフ1階
詳細
https://www.livingmotif.com/news/210902_01

《おまけ:前編を描いたまま、後編がまだ完成していない、民藝の話》

今年は「民藝」という言葉ができて100年。柳宗悦没後60年の記念する年。

東京国立近代美術館で2021年10月26日(火)〜2022年2月13日(日)「民藝の100年」(mingei100.jp)が開催されます。End