最新の台湾デザインの多様性と協調性を展示する
「未来の花見:台湾ハウス」が開催

▲写真提供:Plan b/ photo credit:James Hsu

財団法人文化台湾基金会と共催のアジア NOW 実行委員会による、日本と台湾の文化交流事業「Taiwan NOW(台湾ナウ)」が2021年10月よりスタートした。アート、パフォーマンス、映画、音楽、デザインなど、盛りだくさんのイベントが行われている。

そのなかでも注目は、デザインにフォーカスした展示「未来の花見:台湾ハウス」だ。2021年10月2日(土)から10月17日(日)まで東京・丸の内のGOOD DESIGN Marunouchiにて開催している。

今回の展示では、台湾と日本の友情を「花」というモチーフで表現。台湾の香り漂う庭園のなかでその文化を映した作品に出会う、「未来の花見」という宴をイメージした。そこには再会を待ち望む気持ちや、台湾の自由な文化と多様なデザインを届けたいという想いが込められているという。

イベントを手がけるのは「台湾デザイン研究院」。2004年に台湾デザインセンターが発足し、2020年2月に現名称に変更された。院長の張基義(チャン・キギ)氏は、「政府の取り組みとして、デザインのことやデザインシンキングを非常に重要視しています」と語る。

「政府はこれからのデザインを、プロセスを変え、さらには生産性までも変えて、台湾を次のステップへと推し進めるものととらえています。こうした政策のなかで、われわれの組織が非常に重要なピースになると考えたのです」と、今回のリニューアルの経緯を説明している。

同展の構成としては、台湾デザインの特徴を「リソースの統合」、「社会への応用」、「時代に応じるパワー」の3つに分け、台湾デザインの象徴的な10の事例をパネルで紹介。

▲「リソースの統合」 allrover:Stair-Rover™ 八輪スケートボード

▲「社会への応用」 台湾デザイン研究院(TDRI):美を学ぶ、美学ーキャンパス美学デザイン実践プロジェクト

▲「社会への応用」Plan b:ParkUp DT

▲「社会への応用」 弘道シルバー福祉財団法人:シルバーライダー

▲「時代に応じるパワー」 MINIWIZ 小智研発:MAC ward 組立型病室

▲「時代に応じるパワー」 Hair O’right International Corporation:オーライト No. ゼロ トゥースペースト

さらに、いま台湾でもっとも注目を集める8組のクリエイターが、サスティナブルで再生可能な素材を使用して、台湾の植物のイメージを再解釈した作品を展示。いずれも台湾のデザインエコシステムの多様性と協調性を表現したものとなっている。


上段左から)張家翎(チャーリン・チャン)デザインクリエイター・messagingleaving創始者/劉 文瑄(ミア・リュウ)ビジュアルアーティスト/顏宏安(アン・イエン)アーティスト・クリエイティブディレクター/Melted potato ジュエリーデザイナー
下段左から)廖 浩哲(リャオ・ハオズ)LANDHILLS ディレクター/ANGUS CHIANG ファッションデザイナー/無氏製作 PiliWu-Design プロダクトデザイナー/究方社 (JOEFANGSTUDIO) ディレクター

張院長は、「台湾の社会は自由で大衆的ですが、この点は市民生活だけでなくデザインの考え方にも表れています。非常に多様性のある提案がどんどん出てきます」と述べる。

また同氏は、この1~2年で際立ってきた台湾デザインの特徴として「柔軟性」を挙げている。「小規模でありつつも、つねに最新のものや求められてるものに応えられる、そんな柔軟性をもった考え方」が見られるのだそうだ。

たとえば、野の花園「The Fictional Garden」をコンセプトにした空間デザインは、往生と精神性の探求だけでなく、人間の文化と芸術、自然科学、社会学、技術、神話、文学などの多面性を反映したものとなっている。

▲写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

そして、「リサイクル可能な素材」、「最新の生産技術」、「伝統工芸」を切り口に、さまざまな分野のクリエイターと協力して台湾の未来の庭を創造した。クリエイターたちの作品が、島の西部・中央山脈・花東縱谷といった多様な気候帯や植物や人文に呼応するようにレイアウトされているのも見どころだ。

▲クリエイター:府城光彩刺繍荘 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:Melted potato 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:ANGUS CHIANG 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:無氏製作 PiliWu-Design 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:張家翎(チャーリン・チャン) 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:劉 文瑄(ミア・リュウ) 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:顏宏安(アン・イエン) 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

張院長が重視するのは「協作」という言葉。「協力して作る」という意味で、そこでデザイナーや学生のレベルアップも図られる。「デザイナーが協力し合って、一緒に提案を考え、これを一緒に作っていく。そこにいろんなステークホルダーも入って、ソリューションを導き出す。また、それをただ実現させて終わるのでなく、パターン化にまでつなげてほしいと思います」と期待を込めている。

会場では、台湾茶香水ブランドが桃園国際空港のために開発したオリジナルの香りで、来場者を包み込むように歓迎。シダーを使用して、自然の生態系と香りの宝庫である島の森林を演劇的に解釈した香りだそうで、呼吸をしながら台湾の土地を一歩一歩感じることができる。

▲クリエイター:(上)究方社 (JOEFANGSTUDIO) / (下)MINIWIZ 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲クリエイター:(手前の台)廖 浩哲 LANDHILLS 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲台湾パイン繊維で作られたトレー(Dot Design) 写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

▲写真提供:Plan b / photo credit:James Hsu

なお、10月15日(金)には記念セッション「日本と台湾のパブリックデザインの今」をオンラインで開催。展示のキーワードのひとつでもある「パブリックデザイン」をテーマとしたクロストークを展開する。

また、東京での展示のあと、京都市下京区の「ザ ターミナル キョウト」でも10月23日(土)から11月7日(日)まで展示が行われる。

▲会場:ザ ターミナル キョウト エントランス
写真提供:ザ ターミナル キョウト

「ザ ターミナル キョウト」は、昭和7年に建てられた京町家を復元工事して、開かれているカフェ、アート・ギャラリー、イベントスペースである。かつて、この場所では呉服問屋の名門「木崎呉服店」により呉服商が営まれていた。商家であり、軒先側は呉服商の現場となっており、奥は住まいとなっていたと推察される。施主でもある創業者は、趣向の凝らした教養が溢れており、そのこだわりは茶室をはじめとする部屋の細部や天井の作り、そして奥にある日本庭園に表れている。なお、茶室などは上得意様をもてなしたそうだ。

▲写真提供:ザ ターミナル キョウト

▲写真提供:ザ ターミナル キョウト

「コロナの影響はやはり大きいです」と語る張院長。「台湾でも不景気のときにはデザイン業界も苦しい。それでも、コロナ禍のなかでデザイン研究院という名称に変わり、組織としてグレードアップしたわけですから、モノを作るだけではなくて、社会への参画を目指したいです」。

そして、台湾デザインの今後のテーマは、官民一体となった「イメージの形成」だという。同展でもSDGsやサステナビリティ、ローカル性、テクノロジーなどを取り上げている。

そうしたなかで、「一般の方にもデザインについて、ある程度理解できるような環境を作りたいと思いますし、ナレッジとして産業化していきたい。そして、デザイナーという仕事も社会のなかで地位のあるものにしていきたいと思っています」と抱負を述べている。End

▲台湾デザイン研究院 院長 張基義 氏

「未来の花見:台湾ハウス」

【東京展】
2021年10月2日(土)~2021年10月17日(日) 11:00~19:00
会場
GOOD DESIGN Marunouchi
【京都展】
2021年10月23日(土)~2021年11月7日(日) 10:00~18:00
会場
ザ ターミナル キョウト
詳細
https://www.taiwannow.org/jp/program?id=1