川崎市岡本太郎美術館で始まる
「戦後デザイン運動の原点 デザインコミッティーの人々とその軌跡」展

東京・松屋銀座のショップ「デザインコレクション」と「デザインギャラリー1953」は、デザイン好きが定期的に訪れる場所のひとつ。1955年にここを立ち上げたのは、日本デザインコミッティー(当時は、国際デザインコミッティー)の創設メンバーら15名。勝見勝、亀倉雄策、剣持勇、清家清、丹下健三、渡部力、そして岡本太郎といった若き日の錚々たるデザイナーや建築家、芸術家たちだった。

▲「グッドデザインコーナー」のための選定会風景 1955年頃 ©️日本デザインコミッティー

さらに振り返ると、日本デザインコミッティーの誕生は、イタリアから外務省に届いた一通の招待状がきっかけだったという。世界の優れた工業デザインや建築が一堂に集まる博覧会「第10回ミラノ・トリエンナーレ」に日本が参加を要請されたのだ。当時、産業工芸試験場の意匠部長だった剣持勇や評論家の勝見勝が、日本のデザインを世界に発信しようと立ち上がった。

▲1956年当時の松屋「グッドデザインセクション」売場風景 ©️日本デザインコミッティー

ミラノ・トリエンナーレへの参加は、1957年の第11回に実現することになるが、メンバーにとって同時に重要だったのが、日本におけるデザインの啓蒙だった。そこで、デザイナーや建築家たちが選んだ優れたデザインの製品を販売する場所として、先に触れた「デザインコレクション」や、「デザインギャラリー1953」が松屋の協力によって誕生する。現在の通産省のGマークに先んじたデザイン啓蒙運動のスタートとなった。

▲「第11回ミラノ・トリエンナーレ」会場風景 1957年 ©️国立近現代建築資料館

川崎市岡本太郎美術館で開かれる「戦後デザイン運動の原点 デザインコミッティーの人々とその軌跡」展は、こうした日本デザインコミッティーの活動と、創設メンバーの交流に焦点を当てたもの。

現在でも「デザイン、建築、アートといった垣根を超えて」とか「領域を横断したコラボレーション」といった言葉はよく言われるが、自由闊達な交流からさまざまなプロジェクトを実現させていった当時の先駆的な活動が、約220点の出品作品から見て取れるのではないだろうか。同時に、個性豊かなメンバーのエピソードやデザインギャラリーでの企画展の一部再現など、どれもなかなかお目にかかることのできない貴重な機会になるだろう。End

「戦後デザイン運動の原点 デザインコミッティーの人々とその軌跡」

会期
2021年10月23日(土)-2022年01月16日(日)9:30-17:00
会場
川崎市岡本太郎美術館
神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
詳細
https://www.taromuseum.jp