ワークツールがクリエイティブ組織に及ぼしたインパクト
Notion × Takram にインタビュー

Notionは、世界中のクリエイターに利用されている、ドキュメント管理やナレッジの共有などの管理とコミュニケーションのすべてを行うことのできる、オールインワンツールだ。2021年10月、待望されていた日本語ベータ版がついにローンチされた。

▲デスクトップアプリ

国内のユーザーが増えているなか、今回は、3年以上前から社内でNotionをフル活用しているデザイン・イノベーション・ファームTakramの松田聖大さんと藤吉賢さん、そしてNotionの西勝清さんを交えて、NotionがTakramに起こした組織文化の変化を聞きだした。

▲左: 松田聖大(デザインエンジニア,プロジェクトディレクター)
インタフェースデザインからソフトウェアエンジニアリング、プロダクトデザインなどを手がける。
右: 藤吉賢(デザインストラテジスト,プロジェクトディレクター)
さまざまなテクノロジーのアプリケーションの可能性を模索し、文化的実験に取り組む。

▲Notion ゼネラルマネジャー日本担当 西勝清

組織に横串を通すツール

──普段の仕事ではNotionをどのように使っていますか。

藤吉  TakramではNotionを業務のあらゆる場面で使っていまして、Notionが使えなくなったら仕事も止まると言っても過言ではありません。導入当初は、社内制度の情報にアクセスしやすくするためにNotionを使っていましたが、今ではプロジェクトやメンバーの情報もすべてアクセスできるようになっています。普段のコミュニケーションは主にSlackで行うのですが、フロー情報はSlackで、ストック情報はNotionで共有しています。

松田  Notionを使う前はGoogle DocsやGoogle Sitesを使っていました。当時の課題は、情報を蓄積することはできるものの、それへのアクセシビリティが低い点でした。Takramは、プロジェクト単位の情報共有が多く、部署内で暗黙知を共有されるということは無意識には起こりません。組織横断的に情報と知識を共有する方法を考え続ける必要があり、そのためのツールのひとつとしてNotionを導入しました。

西  SlackとNotionの相互補完的な利用は、Notionの社内でも同じです。お聞きしていて、Takramの使い方に親近感を覚えました。

▲Notionには500以上のアプリを埋め込むことができる。

書く文化の醸成

──Notionを導入して組織の情報の透明性に影響はありましたか?

藤吉  以前使用していたツールはアクセス権限の管理機能が強力で、ページやフォルダごとに細かく権限設定を管理していました。しかし、そういった権限管理は管理者側の負担が大きかったんです。メンバー側も、日常業務の中で「あの情報を見られないので権限をください」というコミュニケーションが負担になっていました。

なので、組織を透明化したかったというよりも、業務を円滑に進めようとした結果として、透明化したという順番です。経緯はともあれ、結果としては非常にオープンになりました。組織全体で透明化が意識付けられるようになったうえ、ドキュメントを書くという文化も強くなりました。

▲社内制度から議事録までNotion上にあらゆる情報を蓄積

──そのような文化は元々あったのか、それともNotionによって生まれた文化なのでしょうか。

藤吉  Notionが導入されてからです。また、プロジェクトでのコミュニケーション方法にも変化がありました。以前は、プレゼンテーション形式で資料を準備していましたが、Notionを導入してからは、みんなのアイディアを全部メモしておいて、クライアントの方にそれを見せることで、議論のプロセスをきちんと辿れるようになりました。

▲プロジェクト用のテンプレート

松田  あとブレイクスルーとなったのは、Takram内の全ミーティングログをひとつのデータベースに統一する試みをしたことです。各プロジェクトは、そのデータベースをフィルタした状態を参照します。これによって、フィルタしない状態のデータベースを見れば、自分が参加しているプロジェクト以外の組織の様子を誰でも把握できるようになり、情報へのアクセシビリティが一段と高まりました。

とはいえ、Takramの業務内容は機密性が非常に高いため、情報漏洩やコンタミネーションを防ぐためのアクセス制御を緻密に行う必要があります。Google Workspaceではアクセス制御を細かくできますが、Notionはあまりできません。そのため、現時点では運用で補う範囲も多いです。

西  権限周りについては、いろんなフィードバックをいただいてます。もちろん現時点でできることもありますし、できない点についてもフィードバックに基づいて新機能を開発していければと考えてます。

日本独自のツール機能

──Notionの開発体制についてお聞かせください。

西  グローバルに展開しているサービスでは、本国が全体の開発方針を決定することも多いですが、Notionの製品開発は、日本に限らずグローバルでひとつのチームとして行っており、世界中からいただいたフィードバックをすべて機能ごとにカウントしています。そのフィードバックに基づいた優先度と会社としての方向性などに基づいて、ひとつのチームから全世界に向けてプロダクトを送り出す体制になっています。

──地域や国に関係なく、全世界のユーザーからのフィードバックを集計して一気にアップデートしていますね。

西  そうですね。日本チームからは日本語環境ならではの機能をリリースしたこともあります。例えば、Notionでは半角スラッシュでコマンドを呼び出して、様々な機能を使っていただけます。一方、日本語環境では全角で日本語を入力している。そこから半角に切り替えてスラッシュを入力すると、面倒ではないかという議論がありました。そこで、日本語入力時のみ全角セミコロンで半角スラッシュと同じことができる機能を日本向けにリリースしました。

▲日本語環境では全角スラッシュでメニューの呼び出しが可能

──ありがとうございます。Notionのような新たなワークツールの導入が社内コミュニケーションを円滑にするだけでなく、組織の新たな文化を生み出すきっかけにもなることがわかりました。国内企業、デザインに関わる人々がこれからNotionをどのように活用していくのか楽しみです。End