スリットアニメーションとアナモルフォシスの融合
「ダイナミックミラーカップ」

静止画のシルエット上でスリットシートをスライドさせると画像が動いているように見えるスリットアニメーションは、スキャニメーションとも言われ、古くからあるアニメーション技法のひとつである。近年は、ページを開く動作によってスリットが移動し、次々にアニメーションを楽しめる書籍も話題となった。

一方で、歪んだ画像を円筒状のミラー面などに反射させたり、異なる角度から見ると正常な形が現れるアナモルフォシスも、絵画や錯視の技法として応用されてきた。

中国のチャオゾウ・ジニュアンリ・セラミックスの「ダイナミックミラーカップ」は、コーヒーカップとソーサーの表面を利用してこのふたつのアート技法を融合し、カップを回転させると動物や鳥、蝶などの動きを楽しめるという付加価値をつくり出している。

カップとソーサー、それぞれを見ても抽象的なパターンや模様にしか見えず、コーヒーを飲むときには、カップ上で無意識に手に取りやすい位置まで持ち手を回すので、そのときに仕掛けに気づく面白さがある。

まさに、ふるきをたずねて新しきを知る、温故知新的な発想から生まれたアイデアだが、メタバースのようなオールデジタルの世界が注目される今も、リアルな世界にはまだ未開拓のデザイン領域が存在することを感じさせてくれる製品といえるだろう。End