農作物を通して気候変動に対応する
新しい研究を米MITが開始

▲Credits:Conor Gearin/Whitehead Institute

マサチューセッツ工科大学はこのほど、複雑な気候問題を解決する画期的なソリューションを提供する、5つのプロジェクトからなる新しいイニシアチブ「Climate Grand Challenges」を発表した。

そのうちのひとつが「低排出で抵抗性のある作物を使った革新的な農業(Revolutionizing agriculture with low-emissions, resilient crops)」である。目標はふたつあり、ひとつは「農業用肥料に由来する温室効果ガスの排出量削減」、もうひとつは「気候変動が植物の代謝に及ぼす影響による農作物の収穫量減少」に取り組むことである。

人類の歴史ではこれまで、気候変動は数百年・数千年単位で徐々に起こってきた。それゆえ植物は、気温、降水量、大気の組成の変化に適応することができた。しかし、今日の気候変動は急激で、穀物の収穫量や種子タンパク質含有量は多くの地域で低下しているという。

▲Photo: Bearwalk Cinema

そこでこの取り組みでは、気候変動に強い多種多様な作物を作るバイオエンジニアリングの基本的なメカニズムを開発することを目指している。ただ、強い植物を作ることは可能でも、その形質が後の世代に継承される方法はまだないそうだ。研究チームでは、「アポミクシス」と呼ばれるプロセスにより、「雑種強勢(雑種である子の能力が両親よりも優れていること)を定着させるクローン種子生産の開発」が実現できるとしている。

また、アメリカの温室効果ガス排出量の約4分の1は農作物の産物に由来するとされる。さらに、肥料の製造と使用による排出量はそのうち3分の1を占めるそうで、そのなかにはCO2の298倍の温室効果がある亜酸化窒素も含まれている。

プロジェクトでは、土壌中のバクテリアとの代謝相互作用から窒素を取り出せる穀物を栽培することを目指している。トウモロコシや米、小麦などの遺伝子組換えによるバイオ工学作物は、窒素固定微生物と共生関係を通じてそれ自体で肥料を作り出すとしている。End