サーキュラーエコノミーの実現に向けて

▲現在の川内火力発電所。ここをサーキュラーパーク九州として利用する計画。

前回まで「ナカダイの産業廃棄物日記」としてお届けしてきたこの連載ですが、今回より「捨て方をデザインする循環ビジネス」とタイトルを変更。いかにしてサーキューラーエコノミーを実現していくかなど、具体的な事例とその背景、考え方を紹介していきます。

資源循環を実現させる知の拠点「サーキュラーパーク九州」

世界的な地球温暖化防止に向けた動きも、昨今のコロナの感染拡大による生活環境や働き方の変化も、ウクライナの侵略に伴う資源不足と資源高も、いろいろなことが連鎖して、脱炭素、CO2削減の機運が高まってきています。特に、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミー(日本でいう循環型社会)へというスローガンは10年以上も前から言われているにもかかわらず、実現できていません。

ナカダイは総合リサイクル業としてリサイクル率99%を維持していますが、リサイクルと資源循環は次元が異なります。集めた廃棄物を何かに使ってもらえるように分別して加工するのと、何かに使うために、それに適した廃棄物の回収、加工の仕組みと技術を組むことの差です。後者でなければ、資源循環はできません。

その資源循環を実現するために必要なのが、循環に関する知の拠点を整備すること、異業種のコラボレーションを推進すること、そしてなにより、地域との連携でその地域の環境と経済の両立を実現することです。

去る7月26 日、持続可能な社会の構築に向けた資源循環の拠点、「サーキュラーパーク九州」の実現に向けた連携協定が締結されました。パークの場所は、九州電力の川内火力発電所跡地で、協定を結んだのはナカダイを含む下記の5者です。

・薩摩川内市 「具体的な検討に対する全体的な支援」
・学校法人早稲田大学 「地域課題解決に向けた研究開発スキーム等の検討」
・株式会社鹿児島銀行 「地域総合金融機関として、地域ネットワークを活用した地域題の抽出、人・企業のコーディネートによる課題解決の推進の検討」
・株式会社ナカダイホールディングス 「廃棄物リサイクルの事業化検討、資源循環スキームの検討」
・九州電力株式会社 「サーキュラーパーク九州の全体総括」

サーキュラーパーク九州では、既存の火力発電所をリノベーションして、すでにあるリサイクル技術を持つ企業を誘致しつつ、それらをベースにした循環技術の開発を目指します。

脱炭素46%削減に向けた、サーキュラーエコノミーの行方

2016年パリ協定後、地球温暖化に向けた各国の温室効果ガスの削減目標の5年ごとの見直しが2021年に迫るなか、日本政府は、2050年のカーボンニュートラル宣言を確実なものにするために、2021年4月に2030年の削減目標を、2013年度比46%削減に修正。それを実行するための“地球温暖化対策計画”を2021年10月に発表しました。

また、2017年の年末に中国の廃棄物輸入の禁止があり、日本は廃棄物の加工委託をできなくなり、その時点で、自国の廃棄物を自国内で処理しなくてはならなくなりました。その後、コロナウイルス感染拡大による工場停止や半導体不足、ウクライナ侵攻など、海外から資源、材料を安定的に調達することができなくなりました。

環境負荷を減らすこと、資源不足を解消することの手段のひとつとして注目されているのが、サーキュラーエコノミーの確立、つまり環境と経済の共存です。サーキュラーエコノミーを達成するには、私たち5者のみではまだまだ足りない部分がたくさんあります。本事業に積極的に参加し、一緒にサーキュラーパーク九州の実現を目指したい企業、大学、研究機関の方がいらっしゃいましたら、ぜひこちらからお問い合わせください。

次回以降、サーキュラー九州でどのような取り組みを行うのかなど具体的な施策に触れていきたいと思います。End