人が自然に還る場所
――Snow Peak LIFE EXPO 2022

人間性の回復を目指して「自然と人、人と人とのつながり」を提供してきたスノーピーク。同社が目指す“未来”を体験できるイベント「Snow Peak LIFE EXPO 2022」が新潟県・三条市にあるSnow Peak HEADQUARTERS Campfieldで、7月9日(土)から10日(日)の一般開催に先駆けて、プレス関係者向けに披露された。

スノーピークはアウトドア製品の開発・製造・販売に留まらず、温泉施設を中心とした複合型リゾート「Snow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」、アパレルや地域創生プロジェクトなどの事業を展開している。キャンプ領域だけでなく、「衣食住働遊」という人間のライフステージに寄り添う同社の新しい取り組みについて、本イベントを通じてレポートする。

社会人 地球人としてつながりたい

Snow Peak LIFE EXPO 2022のメインテーマは「社会人 地球人としてつながりたい」。

メインテーマについて代表取締役 社長執行役員の山井梨沙さん(以下、山井さん)は「文明の進化によって、便利さや快適さと引き換えに人間性が低下しているということが大きな問題だと感じています。人と人、人と自然との距離が離れてしまっているなかで、未来のために人と自然を再びつなぎ直すことが我々の使命だと考えています。人と自然がつながることによって、生活や社会が成り立っているということを可視化してお伝えしていきたい」と言う。

▲スノーピーク 代表取締役 社長執行役員 山井梨沙さん

社会人の立場ではつながりあえなくても、地球人という立場に還れば、すべての人とつながることができる。社会人の視点では見える未来に限りがあっても、地球人の視点ならはるか未来まで見つめて動き出せるのではないか、そんな想いがこのイベントに込められていた。

人の意思と未来を変える仕組み∞×野

▲Snow Peak HEADQUARTERS Campfieldに広がる展示会場

▲野×食のブース

屋外展示会場では、 “野”という言葉と「衣食住働遊」を掛け合わせた各ブースで、それぞれの取り組みを知ることができた。ここで言う野とは、スノーピークそのものであり、さらには自然界全体を指す言葉として使われていた。

そのなかでもひときわ人だかりができていたブースが、∞×野「ライフ・ビオトープ・コンソーシアム(以下、コンソーシアム)」だ。

▲ライフ・ビオトープ・コンソーシアムのブース

▲来場者が人と自然、人と人をつなぐために考えたアイデアが並ぶ

ブース内には、トヨタの車に直接張ることのできるタープや、日本製鉄の環境配慮型素材「TranTixxii®-Eco」を使用したタンブラーなど、企業や自治体と連携した製品やサービスが展示されていた。コンソーシアムとは一体何なのか、ビジネス・ソリューションズ部の坂田真也さん(以下、坂田さん)に話を伺った。

▲ビジネス・ソリューションズ部の坂田真也さん

「コンソーシアムは、これまでスノーピークと関わりのあったB2Bの企業や、全国各地にいる同社とつながりの深い、ファンと言えるようなプレイヤーと一緒に地球人の視点でより良い共創、より良い未来を創造することが目的です。2023年にコンソーシアムを立ち上げるために、今は実験を進めている段階で、今回発表している取り組みもその一環となります」と坂田さん。

目的を達成させるために、コンソーシアムには「コミュニティ」と「アライアンス」という2つの枠組みが用意されているそうだ。

「コミュニティとは地域で活動しているプレイヤーの方々に集まってもらい、他分野の方々と交わることで、相乗効果を生み出すための場のことです。一方、アライアンスはコミュニティで生まれたアイデアをアウトプットする場として、我々と一緒に商品やサービスを開発したり、拠点を設けたりなど、アイデアを現実のものへとつなげる仕組みのことです」と教えてくれた。

コンソーシアムにさまざまな企業・団体が所属することによって、そこから生まれたアイデアがスノーピークの意思を通して、商品や場所やサービスへと変わっていくという仕組みづくりは、これまで顧客とのコミュニケーションを大切にしてきたからこそできること。この試みから生まれたモノが近い将来ユーザーのところへ届く未来を楽しみに待ちたい。

▲Snow Peak LIFE EXPO 2022 会場。この日は夏らしい、青空が広がっていた

地球人の視点で未来を見つめる、FUTURE & SPECIAL SESSION

FUTURE & SPECIAL SESSIONブースでは、山井さんと代表取締役 会長執行役員 山井 太さん(以下、山井会長)が、 さまざまなゲストとともに、地球の未来のために何ができるか、その答えを求め語り合い、そこにいた参加者も一緒になって地球の未来に思いを巡らせた。

▲FUTURE & SPECIAL SESSION 会場

プログラムのひとつ「カテゴライズをなくすプラットフォーム -野とアートの共通点とは-」では、ゲストに松田崇弥さんと松田文登さん(ヘラルボニー)、モデレーターに佐々木紀彦さん(PIVOT)を迎えて、山井さんが登壇。知的障害をもつ人びとの稀な個性と才能を「異彩」と称し、福祉を起点に新たな文化をつくりだしていくことを使命としているヘラルボニー。同社の松田文登さんは、「野とアートの共通点は“境界線がない”こと。アートには予測できない驚きや発見が溢れていると思います。野にも同じことが言えて、予測できないからこそ、常識という壁を越えて心に届くのだと思います」と語った。

▲ヘラルボニー 代表取締役社長 松田崇弥さん(左)と代表取締役副社長 松田文登さん

▲PIVOT 代表取締役社長 佐々木紀彦さん(左)

焚火とデザインの蜜月

▲焚火の様子。同社の焚火台はヒット商品のひとつ

イベント終盤はスノーピークをご存知の方にはおなじみの「焚火トーク」。ここではイベントの参加者が焚火を囲み、会話を楽しむ。焚火を前にすると初対面同士でも、壁を感じずに等身大のコミュニケーションがとれることに驚いた。

▲焚火トークの様子。ひとつの炎を数十人で囲む

この焚火トークは同社にとってとても大切なもの。今では業績好調だが、80年代のキャンプブームの終焉とともに24.5億円あった売り上げが14.5億円まで低迷したことがあった。当時、社長だった山井会長は、直接お客様の顔を見て、声を聞こうと、焚火を囲みながら語り合う「Snow Peak Way」をスタートさせた。そこで聞いた、お叱りや不満をひとつずつ改善し、信頼関係を築くことで、徐々に人が集まりコミュニティが育まれたそうだ。

▲夕暮れ前でも、炎のはぜる音など盛り上がりは十分。初対面でも話が弾む

まだ、UI/UXデザインという言葉が浸透していなかった時代にいち早く、その大切さに気づいていたのがスノーピークだったのではないだろうか。製品が他メーカーと比べ高価格帯にも関わらず、皆がこぞってスノーピークのものを求めるのは、Snow Peak Wayから始まる製品価値とそこで生まれる体験にデザインの力が潜んでいるからだろう。

▲本社内に位置するSnow Peak Museumには創業当時からの製品が展示されている

1998年にスタートしたSnow Peak Wayは今年で24年目、会員数は68.1万人(2022年3月時点)にのぼる。コンソーシアムや地方創生といった事業の展開により、サポーターはさらに増え続けている。

普段、ビジネスとデザインの関係性に着目している人にとって、本イベントがデザインを広義に捉えるきっかけになったのではないだろうか。地球人の視点でデザインをとらえ直すと、どのような景色を見ることができるのか、これからも同社の取り組みに注視していきたい。End