明るく温かみのある木造家具で構成された
ケンブリッジ大学の新しい図書館

▲© Nick Kane

700年を超える歴史をもつとされる英ケンブリッジ大学では、アーカイブとアートギャラリーを備えた24時間開館のモードリン・カレッジ新図書館が2021年に完成した。

モードリン・カレッジには、17世紀にできたイギリス指定建造物グレードIのペピーズ図書館(Pepys Library)があるが、学習スペースは狭いという。新図書館はディテールに至るまで入念に作られた建築で、時代とともに発展してきたカレッジを新たに拡張するものとなる。

▲© Nick Kane

設計を手がけたのはロンドンの建築設計事務所 Níall McLaughlin Architects。周囲の豊かな歴史に敬意を表して、耐荷重レンガ、傾斜が急な切妻屋根、トレーサリー(はざま飾り)のある窓、レンガ造りの煙突などを採用しつつ、現代のサスティナブルなデザイン要素と組み合わせて、時代を超越する建築を目指した。

また、館内は上部に向かって徐々に明るさを増すように設計されている。これは、同事務所による開放性と親密さのコントラストというビジョンを体現したものである。

▲© Nick Kane

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まず目に入るのは、優雅なレンガ造りのファサードと印象的な大型の木製扉である。太陽が差し込む館内には、木製の家具が幾重にも積み重ねられている。トリプルハイトのエントランスホールを抜けると、中央にあるダブルハイトの読書室へと至る。

規則正しく並んだレンガ造りの煙突が木造の床と本棚を支え、暖かい空気を運んで、建物を換気してくれる。煙突は4本あり、そのあいだにはアーチ型の大きなランタンのような天窓を設けた。建物の東側に沿って上部に走る連絡通路からは、大学と庭園、その向こうを流れるケム川の景色を眺めることができる。

▲© Nick Kane

また、館内はグリッド構造になっており、読書室やグループ学習のための広いエリア、そして階段や書架のある狭いエリアと、美しいスペースが並んでいる。自習用の学習スペースも確保できるレイアウトで、デスクは「出窓」に設置されているので、学生はプライベートな空間に隠れたり、仲間と空間を共有したりできるそうだ。

なお、同館はイギリスでもっとも優れた建築に贈られる2022年のRIBAスターリング賞を受賞している。End