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2022.11.07 17:56
岐阜県中津川市では、成瀬・猪熊建築設計事務所が設計を手がけたホテル「お宿 Onn 中津川」がこのほど竣工した。
中津川は岐阜県東部に位置し、かつての中山道の宿場町中津川宿として栄えた地域である。古くから木曽檜の産地のひとつでもあり、地形は信仰の対象であった恵那山にむけて緩やかな勾配となっている。
そこで今回の計画では、この地形とヒノキを設計の出発点とし、少し人通りが少なくなった旧中山道に新たな刺激を与える建築を作ることにしたという。
まず1階共用部を地形と連続させるために、1階部分を上層部よりインセットし、ピロティ状の空間を作り、さらにコンクリートの壁や格天井などのエレメントを内外に貫通させて連続感を高めた。内部は複数のレベルの床を地形に沿って階段やスロープで繋ぎ、恵那山へ登る地形を再現している。
ヒノキについては、鉄骨を支える木構造の柱(燃エンウッド)・前述の格天井・なぐり加工の床・飲食スペースの腰壁・レジンで固めた受付カウンター・製材所の雰囲気を再現したアートワーク・大浴場の衝立など、さまざまな要素をこの地形の中に散りばめ、山の斜面にヒノキを植林するようなイメージで空間を構成した。
客室が主体の2階~5階は、各階のエレベーターホールに燃エンウッドを使用。さらに、標準客室と3種類の特別客室とで、ヒノキをまったく別の魅力を引き立てる形で利用し、1階と同様、多様なヒノキの森となるようにデザインした。
客室フロアの計画面は、低層階では敷地いっぱいにボリュームを張り出し、奥行きの長い客室とした上で窓を小さくし、すぐそばに迫った隣家を気にならなくした。その一方で、上層階では奥行きを短くし、水平に連続した窓とすることで、景色を思う存分楽しめるよう意図した。
これにより、外観の形状はスケールダウンしたいくつかのボリュームに分割され、旧中山道の街並みに程よく馴染みつつ新しいインパクトを与えている。