農とデザインを満喫できる宿泊ヴィラ「cocoon」体験記

千葉県木更津市の有機農場&パーク「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」に、新しい宿泊ヴィラ「cocoon(コクーン)」がオープンした。音楽家の小林武史が総合プロデューサー、「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」デザイナーの皆川明がデザインディレクター、「ikken (イッケン)」の吉田隆人が建築設計を担当したコクーンに実際に泊まってみた。

東京湾アクアラインを走り、都心からクルマで約1時間、コクーンに到着。広さ30ヘクタールのクルックフィールズの敷地は小高い丘に囲まれたすり鉢状で、そのすり鉢の縁に点在しているのがcocoonの客室とキッチンラウンジだ。部屋の玄関から、クルックフィールズ敷地内の農場&パークの風景を一望できる。

ディテールを楽しむ部屋

客室は全部で7棟(ツインルーム6棟、ワイドルーム1棟)。琵琶、黒文字、柑橘、ローズマリー……屋上と周辺に果樹とハーブがたくさん植えられていて、各客室それぞれのシンボルツリーもあるという。

コクーンの名のごとく、楕円形の部屋の中は、まるで繭に優しく包まれているようで、天井と壁の隅まで曲面で仕上げられている。

部屋に入って、まず目に入ったのは、ミナ ペルホネンのシグネチャー柄。ソファ、クッション、ブランケットなど。よく見ると、椅子の座面やゴミ箱の蓋にまでも可愛い蝶柄が引き立てられている。

キッチンスペースから客室に至るまで、イッケンが制作したオリジナル家具を始め、皆川明のセレクトやミナ ペルホネンのデザインによる器やオブジェなど、隅々のディーテルまで気が配られている。

大地を感じるファームツアー

東京ドーム約6個分の面積のあるクルックフィールズの1部は、もともと畑に向いている土地ではなかった。残土受入で長時間をかけて水を浄化しながら有機農法で土壌を変えて造成した。太陽光の恵みによって、水と土壌生態系の循環ができ、今の水質は蛍が生息できるほど改善できているそうである。

宿泊者向けの約90分間のファームツアーがあり、畑見学のかたわら、日が暮れないうちに、晩ご飯の食材として、自分の手で旬の枝豆、マコモダケなどを土から抜き、水流に大量自生しているクレソンも遠慮なく収穫させてもらった。

エディブルガーデンにはさまざまなハーブが植えられ、レモングラスティーでもモヒートでも、好みに合わせて、ドリンクをつくることができる。

こうして、ブラウンスイス牛、山羊に触れ、堆肥集積場、ビオトープ、養鶏場などを回って、自然の循環をしっかりと体験した。ちょうど雨が上がったため、運よくなかなか美しい夕焼けに出会えることもできた。

つながりを感じる食

コクーンの食事プランは2種。キッチンラウンジ「takka」(フィンランド語で煖炉を指す。)で農場の野菜を収穫して自分で調理する、あるいは、レストランスペース「Persu」(フィンランド語で「素」を意味する。)のカウンターでシェフと交流しながら、食材の素の味を提唱するコース料理のいずれかを楽しむこと。

▲キッチンラウンジ「takka」

採りたての野菜、生まれて1、2時間以内の卵、新鮮だから美味しいというよりも、食材を実際見て、触れて、土地とのつながりを感じたからこそ、ものがよりいっそう美味しくなる。

食べた後のゴミが微生物により分解され、堆肥になり、土地に還り、新しい循環になっていく。ときに農場に寄ってくる猪が掘り返した土も、千葉の陶芸作家のところで器となった。現在「takka」と「persu」の器として使われている。これも1種 の「循環」だろう。

想像する余白

今まで見てきたデザインや農業、食以外にも、薪を使う本格的なフィンランド式サウナ、クルック施設内のアート、森への滑り台、現在建設中の地中図書館なども体験できたが、これからの宿泊者の方々の宝探しになれるよう、ここではあえて紹介せず、想像の余地を残したい。以上が、洗練されたデザインと自然の循環を満喫したコクーンでの体験である。End