NEWS | サイエンス
2023.02.09 14:01
スマートフォンやスマートウォッチは、一日中手放せないほどの身近なものとなっている。しかし、故障や新しいモデルの発売により、古いものはすぐに使われなくなる。その結果、電子廃棄物は毎年4,000万トンほど発生する。
そこで、米シカゴ大学の科学者であるJasmine LuとPedro Lopesは、デバイスが「生命」をもてば簡単に捨てづらくなり、廃棄物の問題を解決できるのではないかと考え、導電性の単細胞生物である粘菌の一種「モジホコリ」で作動するスマートウォッチを考案した。
ユーザーは、ウォッチのケースの中に入った粘菌に、定期的に水とオートムギを混ぜたものを与えて成長を促す。粘菌が順調に成長してケースの反対側まで伸びると、ウォッチの機能である心拍数モニターが起動。餌を与えないと機能を停止し、再び世話をすれば数日後、数か月後、数年後には機能が復活する可能性もある。
ユーザーは、「たまごっち」のように粘菌にエサをあげたり、世話をしたりしなければならないため、スマートデバイスとして単に使うだけではなく、命があることでユーザーとデバイスにインタラクティブな関係が生まれる。
2週間の実験では、参加者に1週目で心拍数モニターが動くまで粘菌を育てるように指示を出した。名前を付けたり、元気がないと世話をしたりするなど、ペットのように感じる参加者もいて、時計に愛着を示したことがうかがえた。2週目に餌やりを止めるように指示すると、参加者はショックや罪悪感、深い悲しみを感じた。
デバイスの「ケア」をしたことで、非常に人間味のある感触が得られたのだ。