ルーヴル美術館の所蔵品を文字盤に描いた
ヴァシュロン・コンスタンタンのビスポークウォッチ

スイス・ジュネーヴのウォッチブランド ヴァシュロン・コンスタンタンは、ルーヴル美術館とのコラボレーションによる腕時計「レ・キャビノティエ」の1点物の特別エディションを発表した。

2019年に両者のパートナーシップがはじまり、2020年12月にヴァシュロン・コンスタンタンは、ルーヴル美術館の活動支援オークション「Bid for the Louvre」に「レ・キャビノティエ」のビスポークウォッチを出品した。

これは「腕に傑作を(Un chef d’œuvre au poignet)」と呼ばれるプログラムであり、落札者はルーヴル美術館所蔵の作品を「レ・キャビノティエ」の文字盤にあしらう特別な権利を得る。

今回文字盤に選ばれたのは、画家ルーベンスが手がけた「アンギアーリの戦い(La lutte pour l’étendard de la Bataille d’Anghiari )」だ。

ビスポークウォッチの制作では、この絵の美しさを忠実に再現するため、メゾンの熟練のエナメル職人が「グリザイユ・エナメル」と呼ばれる技法を駆使した。極細の筆やサボテンの棘などで細やかに描写したのちに、900℃で20回ほどエナメルの焼成を繰り返した。

さらに、リモージュホワイトでハイライトをつけ、ブラウンやグレーブラウン、セピアブラウン、クリームブラウンなど、およそ20の色調を使い分けることで、人物や馬に立体感や躍動感をもたせた。

担当した職人は、「ペンとインクの線で描かれたデッサンを直径3.3cmの文字盤に落とし込むのはとても困難な作業でした。力強い筆づかいを残しつつ細かなディテールを再現するには、作品のなかに入り込んで、自分の作品であるかのように振る舞わなければなりませんでした」と語る。

また、裏ぶたには、イタリアの画家ヴァザーリのフレスコ画に書かれた言葉「Cerca Trova」という文字が刻まれ「探す者は見つけられる」といった意味をもつ。ヴァザーリの作品にダ・ヴィンチの失われた「アンギアーリの戦い」が隠されていると考える研究者もいるなど、「Cerca Trova」という文字は、その絵の謎を解く合言葉になっているのかもしれない。End