韓国のモビリティ事情。
目立ったのはヒョンデのEVとカカオ・モバイル

先日、何度目かの訪韓をする機会があり、首都ソウルのほか、地方都市のテジョンにも数日滞在することができた。「世界は一冊の本であり、旅をしなければ1ページしか読むことができない」という有名な言葉があるが、お隣の韓国も、訪れるたびに発見のある興味深い国である。今回から3回にわたって、テジョンとソウルで見かけた、気ニナルモビリティ、建築、そして街なかの工夫を、それぞれ紹介していきたい。

まず、モビリティについてだが、前回の韓国関連テーマのコラムでもヒョンデの主力EVの「IONIQ 5」に触れたが、この数カ月の間に、自家用でもタクシーでも、その数がいっそう増えている印象を受けた。テジョンのヒョンデデパートの前などには、ともするとIONIQ 5のタクシーばかりが並んでおり、ソウルでも街外れの路地に唐突にEVのチャージステーションが現れたりして、インフラ整備もそれなりに充実してきているようだ。

もちろん、充電施設などの関係から、EVが韓国全土で普及しているわけではないだろうが、テジョンはソウルからKTXで1時間ほどの距離に位置し、人口規模では第5の都市である。日本でいえば静岡市的な位置付けで、また、多くの研究機関や政府機関が設置されている街でもあり、1993年にはエキスポの開催地ともなった。そのため、文化水準が高く、EVの普及率も高めなのではないかと思われる。

IONIQ 5に比べれば個体数は少ないものの、その外観によってひじょうに目立っていたのが、上位モデルで日本市場への導入は未定の「IONIQ 6」だ。興味深いのは、同じシリーズ名とは思えないほど、両者のデザインテーマが異なっている点である。たまたま街なかで、両車が並んだところを撮影できたのだが、直線基調の5に対して、6は曲面構成。ピクセルをイメージしたパラメトリックなLEDライトの構造は共通していても、それ以外のデザイン言語はまったく異なっている。

いわゆる尻下がりの形状は、ピニンファリーナが手がけた2代目ダットサン・ブルーバードなど、過去にも少なからず例があるが、IONIQ 6はサイドビューがほぼ逆翼型断面であり、空気抵抗係数のCDも0.21ととても低い。このフォルムではリアに揚力が生じやすいため、トランクリッドの上に標準でエアスポイラーが付加されており、そこまでしてこのカタチをアッパーミドルクラスのEVとして世に問いたかったのだろう。

IONIQ 5は2022年の、そして、IONIQ 6は2023年の、ワールド・カー・アワード3部門(ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー、ワールド・エレクトリック・ビークル、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー)をそれぞれ受賞しており、両車の思い切った造形は、世界的にも大いに評価されていることがわかる。ヒョンデも一般向けのガソリン車ではオーソドックスなデザインのモデルも見受けられるのだが、ことEVに関しては既成概念にとらわれずに挑戦する姿勢を評価したい。

個性的なデザイン重視という意味では、同じくヒョンデの「SANTA FE」やキアの「EV7」といったSUV勢もなかなかユニークだ。どちらもボクシーだが、ディテールはかなり異なり、特異なフロントマスクに加えて、リアスタイルも遠くから判別できる特徴的なものとなっている。特にSANTA FEは、あえて低い位置に高さ方向の幅のあるテールライトを配してすっきりとまとめ、ケールゲートの分割線を角に持ってくることで広い開口部と使い勝手の良さを実現した。

と、ひとしきりクルマの話を書いたが、個人的な移動手段として利用したのは、アプリ連動型の電動アシストレンタサイクルだった。これは、タクシー予約やバイク便、EV充電などのサービスを展開するカカオ・モバイルの1サービスとして提供されているもので、日本のような専用ステーションを用意せずに、サービスエリア内であれば、基本的にどこでも乗り捨て可能となっている。そのため、乗れる車両を見つけるには、アプリの専用マップを使って宝探しをしている気にもなるが、目的地の目の前まで走っていける点が便利である。

車両のQRコードを読み取って解錠し、乗り終えたら鍵をかけるか、アプリから完了すると料金が精算される。そして、駐輪した場所をアプリ内で写真に撮ることで、適切な場所かの判定に使うとともに、次の利用者が探す助けとなるように考えられている。たまたま、30日間で4回×最初の10分間を無料で乗車可能なクーポンがセール中で、また時間割引なども併用して、料金は1時間乗った場合で約500円だった。ちなみに、カカオ・モバイルのサービスは自分の日本のクレジットカードでは登録できても利用時にエラーが出て使えなかったのだが、同じカードを登録しているPayPalは問題なく決済できたので、何かのときに参考にしていただければと思う。

この種のレンタサイクルは、あえて頑丈に重くつくってあることが多いが、電動アシストの設定も踏み出しは重く、少しスピードが出てからアシストが効くようなセッテイングになっていた。おそらく、不意の飛び出し事故を防ぐ意味と、バッテリー消費を抑える目的があるのだろう。アプリの表示では残り1%くらいの充電量になっても、そこからそこそこ粘って走ることができたので、実用性重視の設計がなされていると考えられる。

なお、カカオ・モバイルや他のサービスが電動キックボードのレンタルもしており、街中の人気度では、圧倒的にこちらのほうが高かった。専用パーキングの交通標識までつくられる普及ぶりながら、パリなどでは安全面からレンタル禁止の決定が相次いでおり、日本も含めて、早晩何らかの措置が行われるかもしれない。

次回は、建築編をお届けする。End