渋谷に出現した軍艦島、「渋谷軍艦島展」。


世界遺産・建築好きや廃墟マニアに圧倒的な人気を誇る軍艦島。島全土が廃墟という端島(はじま)、通称軍艦島は、長崎港から船で約45分の距離にある。長崎県には年間700万人の観光客が訪れるそうだが、そのうち軍艦島を訪れる人は29万人。しかし実際に行った人でも、「もっと奥まで行きたかった」「波が高くて上陸はできず、まわりを船でまわっただけ」という声もよく聞く。

風速5メートルを超えたり、波が高い場合には上陸できない軍艦島。

映画「007 スカイフォール」の舞台としても魅力的な姿をみせた軍艦島だが、アクション映画の撮影が行われると崩壊の危機があるとして、ロケではなくコストをかけた精巧なセットが組まれたというのはよく知られている話だ。現在では上陸ツアーに参加しても島の90%の部分には立ち入ることができない。

その軍艦島が閉山となって50年となる今年、精密な3Dスキャンによって制作したデジアルアーカイブが完成した。

会場入り口と展覧会の様子。駅からほど近い文化村通りにある黒く細いビルはうっかりすると通り過ぎてしまいそう。この細いビルの1階から4階まで全館が展示会場となっている。

展示は、ゲームコントローラを使って立ち入り禁止地域を自由に歩き回り、撮影することができるバーチャルコンテンツや、佐藤健寿の撮影によるバーチャル写真の展示、建築の一棟一棟を切り離して見せる「建築解剖展」で構成されている。

人口密度が高く狭い島の中に、折り重なるように連なっていた建築物。切り離して展示されると、ひとつひとつの特徴がよくわかる。

「バーチャル軍艦島」の前で。制作に携わったHERITAGE DATABANKの小西慶、家泉洋平、長崎市世界遺産室長である栗脇善朗の3氏。


俯瞰または仰視など、実際には見ることのできないアングルで軍艦島を把握することができる。

軍艦島は1974年1月15日に閉山された。「渋谷軍艦島展」もその日の1月15日までと期間が限られている。しかし、このデジタルアーカイブの活用には今後さまざまな可能性がありそうだ。専門家の意見だけでなく見た人の自由なアイデアが、新しい境地を開く予感がする。(文/AXIS 辻村亮子)End

渋谷軍艦島展

開催場所
ハビウル渋谷

住所
東京都渋谷区宇田川町26-6
会期
2024年1月12日(金)〜15日(月)
時間
11:00〜21:00
入場料金
無料
主催
渋谷軍艦島展実行委員会(HERITAGE DATABANK/長崎市/一般財団法人産業遺産国民会議