はじまりのはじまり|三澤 遥
#5 わからないを拾う

幼い頃は浜辺に行けば、目の前に広がる海で泳ぎたい衝動に駆られた。今ではすっかりその欲は消え、足元の砂を喰い入るように見つめることがしばしば。視線を落として、面白いもの、好きなもの、とりわけ「なんじゃこりゃなもの」を探すことに没頭していると、自分でも呆れるほど時間が経過していることがある。それは、市場を歩きながら骨董や古雑貨を探すときのルンルン気分に近い。

仕事の撮影で海へ行ったとき、私は浜辺の砂を一袋持ち帰った。手のひらに砂粒を取って広げてみる。肉眼で辛うじて見えるサイズの粒たちに焦点を当てて凝視する。一粒取り出しては指の腹に乗せて、美術館で名画を見るように眺めてみる。石、貝、木の実、樹脂、金属片、陶器片。透明な粒はガラスだろうか。浜辺に集まるマテリアルは実に豊かだ。粒をグリッド状に等間隔で紙に並べてみることにした。