MEMBERSHIP | インテリア / プロダクト
2025.07.23 11:06
ミラノサローネ国際家具見本市と同時に隔年開催される照明展、エウロルーチェ。今年、そこに参加した唯一の日本企業がアンビエンテックだった。欧州のメーカーがひしめく会場にあって存在感を示したそのブースには、新作を含む数々の照明が独自の光を放っていた。代表の久野義憲とデザイナーの言葉から、同社の魅力と個人の力が持つ可能性を探る。
エモーションを重視した明かり
世界各国から多様な照明ブランドが集結するエウロルーチェの会場の中で、アンビエンテックの展示はいくつかの点でユニークだ。製品はポータブルランプに特化し、デザイナーは日本の新世代を中心に起用している。また展示空間の内部は闇で満たされ、静かで繊細な光だけがきらめく。
ブースの壁面には「Emotion is Mobile.」という言葉が記されていた。感性に訴えかけることと、持ち運べること。このふたつの要素の相互作用がアンビエンテックの方向性を形づくってきた。同社代表の久野義憲は、エモーショナルな照明のあり方についてこう語った。
「音楽でも、香りでも、さまざまな歴史や文化に基づいた豊富な選択肢があります。しかし好きな音楽を聴くとき、部屋の明かりを雰囲気に合わせようとすると選択肢がほとんどないことに、私はずっと前から疑問を持っていました。それが今のビジネスにつながっています」。
照明を音楽や香りとの比較で捉える、その視点が興味深い。どちらも住空間の必需品ではないが、人の感覚に対して大きな効果を及ぼすからだ。